2025年10月14日、ヤマハ発動機は、王子ホールディングス、信州大学発のベンチャー企業である精密林業計測と共同で、リモートセンシングを活用した森林情報の取得と解析に関する共同実証を開始したと発表した。

 人手不足や高齢化、安全性の確保などの課題が顕在化する林業現場では、効率的かつ持続可能な森林管理の実現に向けて、デジタル技術の活用が求められている。特に、森林情報の取得は現地調査に時間と人手を要し、広範囲に詳細なデータを収集することは困難である。

 こうした課題に対し、従来の現地調査や先行するリモートセンシング技術では把握が難しい単木単位の詳細な森林情報の取得を目的に共同実証を行う。

 王子グループが保有する複数の国内社有林において、ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプターが広域レーザー計測を実施し、取得した森林情報を精密林業計測が解析する。

写真:飛行するヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター
ヤマハ発動機の産業用無人ヘリコプター

 3社はすでに、岐阜県内の王子グループ社有林において実証実験を行っており、樹種・樹高・直径・材積・位置情報などを一括で可視化することに成功した。地形や水系に応じた樹種分布や、大径木(※1)の効率的な抽出を確認しており、森林整備や資源管理の精度向上が期待される。また、コナラやクリなど、野生動物のエサとなる堅果類(※2)の分布も把握でき、生態系や野生動物管理にもつながるとしている。

※1 大径木:胸高直径が大きい樹木。丸太にする場合には一般的に30cmを超えるものを指して使われることが多い。
※2 堅果類:堅い殻に覆われた果実。一般的にはドングリ、クリ、クルミ、ナッツ類などを指す。

写真:種類ごとに色分けされた森林データ
実証実験で取得した森林資源情報
写真:樹種で色分けされた樹木分類図
実証実験で可視化した樹木分類図
写真:堅果類のDBH(胸高直径)ごとに色分けした森林データ
実証実験で可視化した森林資源量解析(堅果類)

 この取り組みが実用化されることで、現地調査の大幅な省力化が可能となり、作業中の事故や野生動物との遭遇リスクの軽減など、安全性の向上にもつながる。また、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、将来的にはCO₂固定量算出やJ-クレジットへの展開も視野に入れている。

 ヤマハ発動機の森林デジタル化サービス「RINTO」は、高度なレーザー計測技術などを用いて森林の現況を3次元デジタルデータ化する。自動航行機能などの高い航続性能を備える産業用無人ヘリコプターに高解像度LiDARを搭載し、森林の上空から1秒間に75万回のレーザーを照射することで高密度な点群データを獲得する。これにより立木の位置や樹高、直径を判読した森林資源情報、地形情報などを可視化し、林業のスマート化や業務精度・効率の向上に貢献する。