2025年9月24日、Intent Exchange、日本電気(以下、NEC)、NTTデータは、大阪・関西万博において、会場内およびその周辺エリアにおけるドローンや空飛ぶクルマの運航状況を一元的に把握する運航管理システムを試験的に提供すると発表した。

 2025年8月16日から10月13日まで試験運用を行い、運航者から見た運用性を検証し、運航管理システムの統合アーキテクチャ検討に活用する。

 現在、新たなエアモビリティであるドローンや空飛ぶクルマと、既存の航空機との間での安全で効率的な運航管理が求められている。ドローンの運航管理(UTM)については、国際的な関連団体で制度化や標準化が進んでいる。日本では「無人航空機の運航管理(UTM)に関する制度整備の方針」が定められ、国土交通省航空局が運用するドローン情報基盤システム(DIPS2.0)に加えて、民間のUTMサービスプロバイダー(USP)を認定する制度(USP認定制度)の検討が進んでいる。

 3社は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」に参画し、UTMの技術開発や検証、制度化に向けた提言等を行っている。

 大阪・関西万博では、原則ドローンの飛行が禁止されているが、博覧会協会の許可を得たドローンは飛行が可能である。また、同じ会場内では空飛ぶクルマが運航している。そこで、ReAMoプロジェクトの一環として、3社共同で会場内およびその周辺エリアにおけるドローンや空飛ぶクルマの安全運航を目的とした運航管理システムを試験提供する。

試験提供の概要

 3社は、大阪・関西万博会場内において、ドローン運航管理チームである日本UAS産業振興協議会(以下、JUIDA)とブルーイノベーション、EXPO Vertiport(空飛ぶクルマの離着陸場)管理者のオリックス、空飛ぶクルマ運航者のSkyDriveに対してシステムを試験提供した。

【システムの機能】

  • EXPO Vertiport管理者によるジオフェンスの設定
     仮想空間上に設定されるドローンの飛行を不可とする空間であるジオフェンス。EXPO Vertiport管理者がIntent ExchangeのUSPを用いて管轄する空域に対してジオフェンスを設定することで、ドローン運航者はどの空間が飛行不可であるかを把握できる。また、同じ仮想空間上でドローンの位置情報と比較することで、ドローンのジオフェンスへの進入を判断することが可能となる。
  • ドローンの飛行計画に基づくジオケージの設定
     指定された空間の内側でドローンの飛行が計画されていることを示すジオケージ。設定には、ドローン運航者がDIPS2.0に通報した飛行計画、またはIntent ExchangeのUSPを用いて設定した飛行計画を用いる。このジオケージを、ドローンの位置情報と比較することで、飛行計画からの逸脱を判断することができる。
  • リモートIDによるドローンのリアルタイム位置情報提供
     リモートIDとは、ドローンの識別情報と位置情報を発信する機能・規制のこと。原則、国内のドローンには、この発信装置の搭載が義務付けられている。NECは、会場にリモートID受信機を設置し、この受信機でドローンの位置情報を把握して、他のUSPにその情報を提供する。これによりUSPの画面を閲覧するドローン運航管理チーム、EXPO Vertiport管理者、空飛ぶクルマ運航者などの関係者が、ドローンの飛行位置を確認することができる。
  • 有人機のリアルタイム位置情報提供
     既存航空機や空飛ぶクルマに搭載されるADS-B(航空機が位置情報を放送するシステム)の信号を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した低高度用受信機によって受信する。取得した航空機の位置情報は、NTTデータの監視SDSPに送られる。監視SDSPは飛行中の航空機の位置情報をさまざまな手段で把握し、その情報を必要とするドローン運航者等に提供する事業者で、Intent ExchangeのUSPは、監視SDSPから提供される高空域の位置情報を用いて有人機の接近を把握し、ドローン運航管理チームやドローン運航者に提示することでドローンの安全運航に役立てる。
  • ドローンのジオケージからの逸脱、ジオフェンスへの侵入の検知と通知
     USPが各運航のジオケージやジオフェンスの情報を管理し、リモートIDで得られるドローンのリアルタイム位置情報を用いることで、ジオケージからの逸脱やジオフェンスへの侵入を検知する。これらを検知した場合には、ドローン運航管理チームやEXPO Vertiport管理者、空飛ぶクルマ運航者などの関係者に対してメール送付等で通知する。
システムの概要図
試験提供するシステムの概要
写真:万博会場の空中写真に示された空飛ぶクルマの位置情報・ジオフェンス、ドローンの位置情報・ジオケージ
USPの画面(一部抜粋)。検証では、空飛ぶクルマの飛行中および前後でドローンは飛行しておらず、リモートIDのみを受信・表示した。
写真:飛行するドローン(プロドローン)
飛行するドローン
写真:リモートID受信機
リモートID受信機

 ドローン運航管理チームは、引き続き万博期間中に機能の運用性を段階的に検証し、その検証結果を今後の運用に順次反映させるとしている。

 今後3社は、プロジェクトで開発したドローン運航管理システムの運用性を確認し、USPに求めるサービス要件案として取りまとめ、国土交通省航空局が進めているUSP認定制度の要件の検討材料としてフィードバックする。

 USP認定制度の整備方針では、DIPS2.0に基づくUTMをステップ1、USPが関与するUTMをステップ2として、特に、ステップ2初期に持つべき機能として飛行計画の調整支援・空域制限情報の提供、ステップ2中後期に持つべき機能としてドローンの位置情報の把握・適合性モニタリングなどを挙げている。この実証はステップ2の機能に相当する。

 この取り組みによる成果は、JAXAが主導している運航管理システムの統合アーキテクチャ検討に活用する。