2025年6月19日、近畿経済産業局は、次世代空モビリティビジネスに関して、特に空飛ぶクルマ観光での展開におけるポテンシャルに着目した調査を実施し、報告書を作成したことを発表した。
報告書では、近畿管内7府県を対象に離着陸エリアと運航ルート案を設定するとともに、収益予想をもとに事業可能性を評価し、空飛ぶクルマの社会実装に向けた課題や対応の方向性をまとめた。
今後、報告書を活用しながら「関西eVTOL社会実装推進会議」の活動として基礎自治体への取り組みを進め、2020年代後半をめどに商用運航の実現を目指す。
近畿経済産業局は、次世代空モビリティの開発や社会実装に向けて、2024年2月、各府県と連携した取り組みの場として関西eVTOL社会実装推進会議を設置。さらに、実証フェーズに至った際に全国に先駆けて関西が商用運航へと展開できるよう、次世代空モビリティビジネスを広めていくために必要な離着陸場の整備、ルート発掘・設定に関する検討等を行う「関西における次世代空モビリティビジネスに関するポテンシャル調査事業」を実施した。
調査の概要
関西の観光分野における次世代空モビリティビジネスの地域ポテンシャルの調査として「既存データを活用した地域ポテンシャルの発掘や仮想ルート調査」「観光事業者や運航事業者を中心に抽出した事業者を対象にヒアリング」を実施した。
この調査結果を踏まえ、近畿管内の7府県を対象とした運航ルート案の設定と、「離着陸場事業」「運航事業」の収益予測をもとに事業可能性を評価した。
関西は、観光コンテンツが全域に広がっているため、観光分野での次世代空モビリティビジネスの活用が非常に有効であることを確認した。一方、以下の課題や対応が必要であることがわかった。
【実装に向けた課題と対策】
- バーティポートの設置や空港との連携などインフラ整備の推進
- 利用価格低下に向けた需要拡大と運航効率向上
- 空港等既存アセットの活用や、社会需要性を促進させる遊覧事業の実施
【地方自治体との連携や規則対応】
- 都市部の飛行ルート確保や離着陸場の整備促進に向けた、地方自治体と連携した社会受容性を高めるための対策
- 空飛ぶクルマの性能を踏まえた航空法改正と安全基準策定、規制緩和促進
- 国や先進的な府県の取り組みについて、他府県および基礎自治体への横展開
近畿経済産業局は、報告書で設定した広域的な運航ルート案など、関西地域の次世代空モビリティシステムのポテンシャルを民間事業者等ステークホルダーに発信するとしている。併せて、関西eVTOL社会実装推進会議を核とした7府県の連携と、その先の基礎自治体(市町村)へ向けた取り組みを加速させる。具体的には、基礎自治体を対象にセミナーやヒアリングを実施し、次世代空モビリティビジネスへの理解促進とニーズ・検討状況、施策要望等を把握し、情報を本省とも共有することで今後の支援施策検討につなげる。そして、設定した運航ルートの実現に向けた民間事業者と自治体の個別検討の場の設定(官民のマッチング)に取り組む方針だ。
関西の経済界とも連携しながら、2020年代後半をめどに国内初の次世代空モビリティの商用運航実現を目指す。
▼近畿経済産業局「関西における次世代空モビリティビジネスに関するポテンシャル調査事業」
報告書概要
https://www.kansai.meti.go.jp/3-5sangyo/aam/R6fy_nova/20250619_gaiyou_survey_of_ptential_eVTOL.pdf
報告書本体
https://www.kansai.meti.go.jp/3-5sangyo/aam/R6fy_nova/20250619_survey_of_potential_eVTOL.pdf