MS&ADインターリスク総研は、空飛ぶクルマに対する消費者の意識や社会受容性を把握し、商品・サービスの高度化と新たな開発への活用を目的に「空飛ぶクルマの社会受容性等に関する調査(第4回)」を実施したことを発表した。
同社は、2020年9月、2021年8月、2024年2月にも同調査を実施しており、2025年2月に4回目となる調査を行った。
調査結果によると、空飛ぶクルマが実現すると回答した消費者は年々低下傾向にある。調査実施前の2024年9月に大阪・関西万博での商用運航がデモフライトへ方針を切り替える発表があり、空飛ぶクルマの実現に対する懐疑的な意見が増えた可能性があるとしている。一方、空飛ぶクルマに対して「渋滞のない移動」「移動時間の短縮」を期待する回答が多く、過去の調査結果と同様に交通の利便性向上への期待があることを確認した。
空飛ぶクルマに関する意識調査
空飛ぶクルマの社会実装に向けて、2018年に「空の移動革命に向けた官民協議会」が設置され、政策や法整備の検討が進められている。自動車や鉄道のように身近な存在としての日常の移動など居住区近くでの運航のほか、中山間地帯や離島での移動、観光(空港や駅から観光地への移動を含む)、災害時の救助など、さまざまなユースケースも検討されている。
空飛ぶクルマの社会実装には、ネガティブなイメージを持つ人の受容性を高めるための課題とその克服のための条件を見極めることが必要となる。社会(利用者を含む)がこの新しいモビリティに関する官民等の動きをどう受け止め、何を期待し、何に不安を覚えているのかを理解することが重要となる。
調査の概要
- 調査方法:Webによるアンケート
- 調査対象:15歳~89歳の男女個人
- 回答数:2,800人
渋滞や渋滞による公害などの課題解決の手段として期待されていると考えられる大都市圏(グループ①)、大都市からのアクセスや県内でのアクセスの課題解決の手段として期待されていると考えられる地域(グループ②・③)、その他の地域(グループ④)を設定し、各グループの回答数を収集した。また、性別、年代がほぼ均等となるよう割付を実施した。- グループ① 東京都・大阪府在住者:800人
- グループ② 長野県・大分県在住者:800人
- グループ③ 山梨県・石川県在住者:800人
- グループ④ 上記以外の在住者:400人
- 実施時期:2025年2月
調査の目的
- 日常利用するモビリティに対する不満や期待を明らかにしつつ、空飛ぶクルマに対する期待や不安・課題などを浮き彫りにする。
- 空飛ぶクルマに対して、回答者の属性によって異なる意見等を持っているとの仮説のもと、期待や不安・課題などを浮き彫りにする。今回考慮した属性:住所(都道府県、郵便番号)、性別、年齢、職業、年収。
- 過去データと比較し経年変化を把握する。
調査項目
調査項目は以下のとおりとし、計54問の質問を行った。
- 日常利用するモビリティの課題と期待するソリューション
- 空飛ぶクルマに関する認知度と実現への期待
- 利用者としての期待・不安
- 社会としてのベネフィット・不安
調査結果の概要
2025年2月の調査では、空飛ぶクルマが実現すると思うと答えた人の割合は44.1%。2020年9月の調査は57.8%、2021年8月は53.1%、2024年2月は49.3%となり、徐々に減少していた。
空飛ぶクルマに対して期待することでは、「渋滞のない移動」が最も多い結果となった。次いで「移動時間の短縮」が多かった。過去の調査でもこの2項目は多く、空飛ぶクルマの社会実装による日常移動の利便性向上が期待されていることを確認した。
職業別に、空飛ぶクルマが実現したら利用したいと思うと答えた人の割合が最も多かったのは、「会社役員・経営者」の63.6%。次に多かったのは「公務員」の61.0%。利用したくないと思うと答えた人の割合が多かったのは、「無職」の56.0%、専業主婦(夫)と続いた。この結果より、空飛ぶクルマの利用希望が職業ごとに異なることを確認した。
利用者以外の(空飛ぶクルマの飛行ルートや離着陸場周辺住民としての)立場で、空飛ぶクルマに対する不安という面では、いちばん多かったのは「墜落した場合の人命、財産に対する甚大な被害」であり、「落下物」がこれに続いた。これらは過去の調査でも同じ結果であった。空飛ぶクルマが墜落したり建物等に衝突しないことや、荷物等を落とさないこと、騒音を出したり犯罪に悪用されたりしないこと等、属性にかかわらず共通の不安を有しているものと考えられる。
まとめ
今回の調査により、利用者を含む社会が、現在の移動手段に対して持つ不満や課題、空飛ぶクルマに対する期待、不安について地域や属性等の特性を踏まえた結果を示すことができた。
社会受容性の観点からは有事の際のスキームや不安要素についての対策に取り組む必要があることを明らかにした。
空飛ぶクルマの社会実装に向け、市場性、社会受容性双方を高めるための課題とその克服のための条件を理解し、特に利用者の立場では、地域、属性等の特性を踏まえた対策を講じる必要がある。
▼調査結果の概要報告書(RM NAVI)
https://rm-navi.com/search/item/2164
