2025年6月10日、Terra Drone(以下、テラドローン)は、サウジアラビアに拠点を置く同社子会社Terra Drone Arabia(以下、テラドローン・アラビア)を通じて、サウジアラビア保健省および医療物資・機器の物流・調達を担う政府系企業のNUPCOと連携し、イスラム教の宗教行事「ハッジ」において、ドローンを活用した医療物資配送プロジェクトを実施したと発表した。

 ハッジは、2025年6月4日から9日にかけて実施され、テラドローン・アラビアはドローンの運用を統括する主担当事業者および技術パートナーとしてプロジェクトに参画した。また、同プロジェクトで使用するドローンの運航管理には、テラドローンの子会社でベルギーに拠点を置く運航管理システム(UTM)プロバイダーのUnifly(以下、ユニフライ)が提供するUTMが採用された。

写真:操縦者など複数の人の向こうで飛行するドローン

 ハッジとは、イスラム教の五行の一つである巡礼のこと。毎年サウジアラビア・メッカには200万人を超える巡礼者が世界中から集まり、期間中は巡礼者が一部の都市に集中するため、深刻な交通渋滞が発生し、医療物資輸送などの緊急対応に大きな課題が生じている。

 このプロジェクトでは、テラドローン・アラビアが、ミナおよびアラファト(※1)において、血液や医薬品などの緊急医療物資をドローンで配送した。使用機体は、医薬品の品質を保持するため温度管理が可能な冷却機能付きペイロードボックスを搭載したドローン(DJI Matrice 350 RTK)。これにより、従来は地上輸送で1時間半以上かかっていたところを6分未満で輸送した。

写真:飛行するドローン
ドローンが医療物資を配送する様子

 ドローンの運航管理には、ユニフライが提供するUTMを活用。ハッジ期間中に人口が集中する都市上空を安全に飛行するため、各ドローンとUTMを連携させ、目視外で飛行する複数機の位置情報をリアルタイムで監視し、UTM上で管理を行った。UTMはドローン同士の衝突リスクを事前に察知するアラート機能や、着陸を指示する制御機能を備えている。

※1 ミナ(Mina)およびアラファト(Arafat):メッカ近郊に位置し、ハッジ期間中に巡礼者が特定の宗教儀式を行う主要な聖地。

写真:UTMの画面。地図上にドローンの位置が示されている。
ドローンの運航状況を示すUTMの画面

【各社役割】

テラドローン・アラビア実施事業者および技術パートナーとして、ドローンによる医療物資の配送を担当
ユニフライ自社開発のUTMソリューションを提供し、複数のドローンの遠隔での運航管理を担当
サウジアラビア保健省(Ministry of Health)プロジェクトの実施主体
NUPCO医療物資の調達・供給を担う政府系企業

 そのほか、ドローンによる医療物資輸送に関する許可・調整は、内務省、王宮(Royal Court)、サウジ航空航行サービス会社(SANS)、サウジ民間航空局(GACA)、軍事測量部門(Military Survey)を含む関係当局のもと行った。

 テラドローンは、2025年4月にサウジアラビア王国の総合エネルギー・化学企業アラムコとのMOU締結を発表しており、同国内の石油・ガス業界の技術革新、現地での技術展開に取り組んでいる。今後もさまざまな重要分野でドローン技術の普及を拡大し、持続可能なインフラ構築に寄与するとしている。