2025年5月26日、全国新スマート物流推進協議会は、過疎化やドライバー不足により地域のラストワンマイル配送が困難となっている現状を踏まえ、ドローンなどの先端技術と地域の共助を組み合わせた配送モデル「コミュニティ配送」の実現に向けた提言書を策定し、平将明デジタル行財政改革担当大臣に提出した。

 自治体を中心に50以上の会員が加盟する全国新スマート物流推進協議会は、物流業界内外の垣根を超えたオープンな情報交換、経験の共有、議論・研究を行い、新スマート物流(※1)の社会実装を通じて豊かな地域社会づくりに貢献することを目的に活動している。

※1 新スマート物流:地域の中での荷物の動きの最適化、地域に出入りする荷物の動きの集約と効率化、陸送・空送のベストミックス、貨客混載、自動化技術等の複層的な活用により地域社会のモノの流れを最適化し、省人化対応、脱炭素化を図る取り組み。

写真:横に並ぶ5人
(左から)全国新スマート物流推進協議会 理事 エアロネクスト代表取締役CEO 田路圭輔氏、副会長 舩木直美小菅村長、平将明デジタル行財政改革担当大臣、会長 竹中貢上士幌町長、理事 セイノーラストワンマイル代表取締役社長 河合秀治氏

 提言書では、コミュニティ配送を通じた持続可能な地域物流インフラの構築を目指している。コミュニティ配送とは、一定地域内において荷物を集約拠点(デポ)に集め、その先のラストワンマイルの配送をドローンや自動運転車両、自動配送ロボットといった先端技術、または地域住民の協力による共助の仕組みで行うことで、持続可能で効率的な地域配送を実現するモデル。物流事業者は拠点までの配送をもって業務を完了するため、効率性が向上し、同時に地域住民の生活インフラとしての物流を確保できる。

 過疎地域は、人口減少とドライバー不足により従来の物流網の維持が極めて困難になりつつある。例えば北海道上士幌町では、配送量の2割を占める農村部への配送に、全体の配送時間の8割を要している。

 今回の提言では、先端技術と地域住民の共助を融合したコミュニティ配送モデルの導入を提案しており、新技術を活用しながら、地域の住民や事業者が協力してラストワンマイル配送を担うことで、効率化と持続可能性の両立を実現する新たな地域物流を目指すものだ。

 この仕組みを各地に展開するには、地域ごとの事情を踏まえた制度設計と合意形成の枠組みが必要となる。提言では、地域住民、物流事業者、自治体が協議して地域物流計画を策定する「地域物流協議会」の設置を提案している。この枠組みは、公共交通分野において導入されている「地域公共交通会議」の制度設計を参考としたものであり、地域に根差した物流の在り方を実現するための基盤となる。

 コミュニティ配送は一定の公共性を有するため、初期投資や運営費の分担について財政面での制度設計も欠かせない。これらの課題に対応するため、政府による制度的・財政的な後押しが求められる。

▼地域の物流課題を解決する「コミュニティ配送」の実現に向けた提言書
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