2025年5月26日、Liberaware(以下、リベラウェア)は、香港を拠点とするAI・ドローンのスタートアップ企業であるAlpha AI Technology(以下、Alpha AI)と、包括的な業務提携に関する覚書(MoU)を締結したことを発表した。海外市場への事業拡大および収益基盤の多角化を狙う。
この提携により、リベラウェアの屋内狭小空間での点検技術と、Alpha AIが香港市場で展開するAIを活用した屋外インフラ点検技術により、インフラ設備の安全性と維持管理の効率性を大幅に向上させる統合型ソリューションの共同開発を進める。また、香港市場での新たな事業機会を創出し、アジア地域全体への展開を視野に入れた協業体制を構築するとしている。
香港では建物の老朽化が深刻な課題となっており、香港特別行政区政府によると、築50年を超える建築物は全体の約2割を占め、2030年には約1万4,000棟に達すると予測されている。この対応のため、香港政府は築30年以上の建物に対して点検を義務付ける「Mandatory Building Inspection Scheme(直訳:強制建物検査制度)」を実施している。
また、香港政府は2024年よりドローンを活用した「低空経済」の推進に注力しており、ドローンによるインフラ点検や輸送、監視の普及が進んでいる。
Alpha AIは「低空経済サンドボックス」の認定企業として実績を重ねながら、香港政府と連携し、独自開発のAI技術と3D技術を活用したドローンによる建物・インフラの外壁点検、斜面の異常検知、警備巡回などのサービスを提供している。
リベラウェアは、狭小空間点検ドローン「IBIS2」の開発・製造・販売をはじめ、デジタルツイン技術や各種ソリューション提供において豊富な知見を有している。
日本市場において屋内狭小空間の点検技術を提供するリベラウェアのノウハウと、香港市場で評価を得ているAlphaAIの屋外インフラ点検技術を合わせることで、建物内外の包括的管理が可能な統合インフラ保守ソリューションの開発を進め、香港におけるインフラの安全性向上と維持管理効率化を図る。
主な提携内容
- 日本と香港の両市場における事業機会の共同探索
2社の営業・技術ネットワークを活用し、香港政府が主導するインフラ保全事業への共同参画および提案活動や、両社技術の組み合わせによる実証実験および実地テストの共同実施を行いながら、新規プロジェクトの創出と市場参入を検討する。 - IBIS2を活用した屋内外を統合したインフラ点検ソリューションの共同開発・提供
AlphaAIの点検とリベラウェアのIBIS2を活用した屋内狭小空間点検を組み合わせた点検・データ取得ソリューションの包括的サービスの開発と社会実装を推進する。 - 人材育成および技術者交流プログラムの実施
両社間のエンジニアや技術者の相互派遣、共同トレーニングプログラムを実施し、AlphaAIのAI解析技術をリベラウェアの屋内点検データに応用し、新たな価値を創出する。
この提携により両社は香港において、屋内外を対象としたドローン点検の実証実験を共同で実施する。点検によって収集したデータをもとに3Dモデリングを構築し、インフラ設備の状況を詳細に可視化する。さらに、AI技術を活用した劣化状況や異常箇所を検知する自動検知機能の導入を進める。これらの機能を空間情報と統合し、デジタルツインとして提供することで、インフラ維持管理の効率化と精度向上を目指す。
また、行政関連施設の点検を積極的に実施し、点検ソリューションの有効性を実証することで、政府が推進するインフラ設備の義務点検における標準化規格への採用を目指す。短期的には香港市場での成功事例の創出を図り、中長期的にはそのノウハウを日本を含むアジア各地域への展開に活用する方針だ。
