2025年5月16日、大成建設は法和と共同で、自律走行ロボットの自動緊急停止装置「ロボストップシステム」を開発したことを発表した。さまざまなロボットに搭載可能で、建設現場での自律走行ロボットの安全運転性能を大きく向上させる。

写真:反射テープに囲われた内側にロボットがいる様子
反射テープで囲って実証実験を行う様子

 従来、自律走行ロボットは、人や障害物を検知し回避するシステムや接触した場合瞬時に停止するテープスイッチ、落下防止センサー、緊急停止ボタン等の安全装置を備えていることが一般的であった。しかし、軽量の自律走行ロボットには十分な対策であっても、フォークリフトを自律走行させるような場合は、システムの異常など万が一の際に大きな事故につながる可能性があるため、さらなる安全措置が必要となる。

 自律走行環境下では、システムの暴走に対応する2重の安全システムを準備し、かつ、別回路での緊急停止ボタンを装備する等の対応が取られるケースが多くなる。一方、緊急停止ボタンでの最終的な安全対応は常に監視者が必要で、人為的な見落としミスがないことを前提として無線で作動させるケースが多いため、万全とは言えなかった。

 また、フォークリフトは積載物があるため、積載や荷下ろし時には安全センサーを遮断する必要が生じたり、接触センサーなどの物理的な安全装置の装備が難しいという特性もある。そのため、さらなる安全対応システムを開発する場合、レーザーバリアを設置し、そのバリアが遮断された場合に緊急停止信号を出すようなシステムが一般的に想定されるが、設置の手間や製品コストを考えると現実的ではなく、無線通信に対するリスクも解決しなければならなかった。

【装置の特長】

  • 反射テ-プを用いて自律走行ロボットを自動で停止
     作業範囲の床に反射テープを配置して囲うことで、システムトラブルが重なる誤作動が起きても、自律走行ロボットに取り付けた反射センサーによって反射信号を検知し、自律走行ロボットが作業エリア外へ暴走することを防止する。
従来のロボットの運用(作業ロボットが作業エリアから出てしまう様子)と、装置導入後のロボットの運用(反射テープのところで作業ロボットが停止する様子)イメージ
従来のロボットの運用と装置導入後のロボットの運用イメージ
  • 有線接続で安全への信頼性が高い緊急停止システム
     有線接続するため、安全への信頼性が高い。反射センサー装置は1台につき2重の機能を有しており、さらにそれを2台、3台、4台と取り付け台数を増やすことで、万一のセンサー検知ミスも起きない機構とできるよう工夫している。
  • 設置が簡単で安価なシステム
     停止区画を設定する反射テープは幅25mmほどで十分なため、巻き尺のように専用の巻取機に納めてあり、設置が容易。またセンサーは強さを調整できる機構となっているため、さまざまなロボットへの取り付け位置(高さ)の変化に対応する。
     システムの概要は、作業範囲の床に反射テープを配置し囲うことで、システムトラブルが重なる誤作動がおきても、ロボットに取り付けた反射センサーによって反射信号を検知し、ロボットが作業エリアへ暴走するのを防止する。センサーの機構も簡単で安価に製作可能かつ取り付けも容易だ。
写真:自動緊急停止装置を搭載した「Rapyu.」、搭載された自動緊急停止装置
フォークリフト型ロボット「Rapyu.」に搭載された自動緊急停止装置(技術協力:アイ・ビーム)
写真:積み上げられた反射テープ
反射テープ
写真:ハンドルを備えた巻取機
巻取機

 今回、同システムを大成建設が開発した「T-DriveXシリーズ」のフォークリフト型ロボット(Rapyu.)に搭載し、その高い安全性と有効性を確認した。

 今後、同システムを他のロボットやAGVにも順次搭載することで、建設現場におけるロボットの安全な自律走行運転を構築し、現場作業の効率化を進めるとしている。

【大成建設】自動緊急停止装置「ロボストップシステム」を開発(大成建設公式YouTubeチャンネル)