2025年4月24日、固定翼ドローンソリューションを開発するAirKamuy(エアカムイ)は、ANOBAKA3号投資事業有限責任組合、スパークル1号投資事業有限責任組合、STATION Ai Central Japan 1号投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資、および名古屋銀行、日本政策金融公庫からの融資を合わせ、プレシードラウンドで1億円の資金調達を実施したと発表した。

プレシードラウンド1.0億円 AirKamuy

 不透明さを増す昨今の安全保障環境において、無人アセットの需要は高まっている。また、航空機パイロットの不足が課題となる中、海上保安においても省人化を実現するソリューションの登場が期待されている。

 AirKamuyは、広範囲をカバー可能な固定翼VTOL無人機「Σ-1」をはじめとした固定翼ドローンの開発およびサービスの提供を行っており、今回の資金調達を受けて独自の技術開発力を生かしたソリューション提供に加え、官公庁との契約に適する社内体制強化に取り組むとしている。

 日本は世界第6位の排他的経済水域を持つ一方、少子高齢化が進み、広範囲の警戒活動における省人化が求められている。AirKamuyは、5時間以上飛行が可能で、艦上からも運用できる固定翼VTOL無人機「Σ-1」の試験飛行を進め、海洋状況把握(MDA)への活用を目指す。

 また、近年の地政学的リスクの高まりを受けて、安価かつ大量生産可能なドローンが求められていることから、大量輸送・生産性や環境に配慮した段ボールドローン「AirKamuy 150」の開発も進める。

 同社は、日本式のディフェンステックスタートアップのロールモデル確立を目指しており、優れた技術を有するスタートアップの防衛領域への参入支援にも取り組んでいる。

写真:海上上空を飛行する段ボールドローン
段ボールドローン「AirKamuy 150」

 防衛用途を起点に開発を進めた技術を災害対応や物資輸送などの民間分野にも展開させる方針で、特に長距離飛行が可能な機体や低コストドローンソリューションは、民間でも強く求められているため、2025年夏頃から地方自治体や民間企業と連携した実証実験を積極的に行う予定。こうした取り組みはデュアルユースと呼ばれ、経済産業省や防衛装備庁も先進的なデュアルユース技術を有するスタートアップ創出の必要性を示している(※1)

※1「デュアルユース・スタートアップのエコシステム構築に向けて」(2024年9月 防衛装備庁・経済産業省)

各者コメント

ANOBAKA シニアアソシエイト 小林晃氏

 国を守る技術が、スタートアップから立ち上がる時代。そんな未来を真っ向から目指すチームとご一緒できるのは、VCとしてこの上ない幸運です。

 一方で、欧米に比べて日本では防衛分野におけるスタートアップの存在感はまだ小さく、資金も集まりにくいのが現実です。

 そんな茨の道に挑む“あのバカたち”──それがAirKamuyです。

 50年後、100年後の日本にとって不可欠な技術を、スタートアップの手で築いていく、そんな挑戦を微力ながらリード投資家としてご支援させていただければと思っております。

スパークル ベンチャーキャピタリスト 佐藤立基氏

 この度、プレシードラウンドに参加できたことを大変嬉しく思います。

 山口さんの『平和と自衛隊員・海上保安官の命を守りたい』という強い思いに深く共感いたしました。当社は防衛用途を前提とするVTOL型ドローンの開発を事業の主軸に据えた、日本では大変珍しいスタートアップです。

 私は元陸上自衛官として、現場における人材不足や安全確保等の課題を肌で感じてきました。本プロダクトが実際に開発・導入されることで、自衛官や海上保安官の皆さまが抱える課題を解決し、ひいては日本の平和と安全を守ると確信しています。

 愛知県という地域から全世界へ、平和を守る同社の成長を全力でご支援してまいります!

STATION Ai 投資企画室 担当部長 中島順也氏

 東海地域には、日本を代表する航空宇宙産業の集積があります。名古屋大学出身の山口氏・小林氏が率いるAirKamuy社は、その中心地から誕生した固定翼無人機開発のスタートアップです。地域の産業基盤と密接に連携し、これからまさに官民両方のフィールドで事業を展開していこうとしています。自社設計・自社加工によるスピーディな開発体制と、従来の常識にとらわれない柔軟な発想による機体設計。その掛け合わせが、これまでにない空の選択肢を生み出しています。無人化・省人化が求められる日本の空において、AirKamuy社がその変革を担う存在になると確信しています。同社が東海を代表する次世代航空企業として飛躍することを期待し、今後も全力で伴走してまいります。

AirKamuy 代表取締役CEO 山口拓海氏

 ディフェンステックかつハードウェアという、日本では非常に扱いづらい当社に対して、投資や融資にてご支援をいただけることに感謝を申し上げます。この2年間、私は、多くの自衛官、海上保安官の方々などと対話を重ね、安全保障体制の重要さ、省人化の必要性を痛感してきました。

 AirKamuyは、今回お預かりしました資金を活用し、「平和を守る」「ひとを守る」ことに寄与するソリューションの提供に向け、邁進していく所存です。

AirKamuyについて

 2022年8月に設立されたAirKamuyは、広範囲の警戒、長距離物資輸送等に適した固定翼ドローンの開発を行うスタートアップ企業。設計やプロトタイプの製造を内製化することにより、大手企業に負けないスピード感でソリューションを提供する。自社開発機体に加え、各種要望に応じた機体の提案・開発・運用も行う。

【主な自社開発機体】

  • 5時間以上の連続飛行が可能な固定翼VTOL無人機「Σ-1」
  • 低コスト環境配慮型段ボールドローン「AirKamuy 150」
写真:飛行する固定翼VTOL無人機「Σ-1」
固定翼VTOL無人機「Σ-1」
写真:人が機体を手で投げてドローンが飛び立つ様子
「AirKamuy 150」のハンドローンチ