Spiralは、完全自律飛行ドローンを用いた山岳トンネル観測ソリューションSpiralEyesを、2025年2月18日より日本と欧州のトンネル建設事業者向けに販売を開始した。
建設業界では少子高齢化に伴う技術者不足が深刻な問題となっており、省力化や無人化が求められている。山岳トンネル工事でも、従来の目視による観察・計測業務は多くの人員や時間を有し、危険も伴うことから、ロボットやAI技術を活用したDX化が期待されている。
その解決策の一つとして自律飛行ドローンの導入が検討されてきた。しかし従来技術ではGNSSが届かない環境での運用が難しく、高度な専門知識が必要であった。
非GNSS環境下でのドローン・ロボットの自律制御技術を開発してきたSpiralは、今回リリースした山岳トンネル観測ソリューションにより、山岳トンネルの施工現場において作業時間を最大86%削減できることを確認した。
山岳トンネル観測ソリューションSpiralEyesは、同社が独自開発した非SLAM屋内型自律飛行システム「MarkFlex Air」を使用している。事前にARマーカー(アルコマーカー)を現場に設置し、アプリ上でドローンの飛行プランを設定すると、ドローンに搭載したカメラが飛行指令情報が入ったARマーカーを読み取り、パイロットや熟練技術者がいなくとも運用ができる。導入現場に合わせて取得するデータを変更することができ、またAIによる画像解析機能を連携させることで省力化を推進する。
建設現場では重機類が移動するなど、作業現場の状況は日々変化する。そのため、Spiralは重機類との衝突を避ける障害物回避機能を戸田建設と共同開発し、実際の現場で実証実験を行ってきた。2025年2月には、建設中の山岳トンネル内での本格導入を開始した。
SpiralEyes 詳細
SpiralEyesは、現場作業員だけで活用できることを主眼においた月額のサブスクリプションサービス。24時間365日トンネル坑内監視が可能な「HawkEye」、トンネル坑内で危険な作業の一つである切羽観察を自動化する「KirihaEye」、飛行中に撮影した動画より生成した3次元点群データを用いて出来形検測を自動化する「ScanEye」の3つを用意しており、ペイロードを変えることで現場にあったソリューションを提供する。
サービス名 | 用途 | 対象者 | 取得データ |
HawkEye | 遠隔巡回監視 | 施工者 | 4Kビデオ、360度映像、各種センサーデータ(ガス、温度など) |
KirihaEye | 切羽観察 | 施主、施工者 | 4K写真(AIによる評価を行う場合もあり) |
ScanEye | 出来型確認 | 施主、施工者 | 3次元点群データ、差分解析結果 |
欧州展開
2024年9月末、Spiralは、オーストリアのウィーンに現地法人(Spiral Euroe FlexCo)を設立し、ソリューション向上とグローバル展開を目指している。2024年末には、オーストリア現地の測量会社と地下鉄トンネル建設現場で実証実験を実施し、3次元点群データを用いた測量の自動化を進めている。
山岳トンネル観測ソリューションは、2025年9月末までに国内4つの山岳トンネル現場に導入予定。また、欧州では施工中の山岳トンネルのほか、シールドトンネル、運用中のトンネルや廃トンネルでの活用ニーズが高まっており、技術開発と導入準備を進めている。
今後、同社は日本や欧州での山岳トンネル観測ソリューションの事業展開を推進するとともに、共同溝、水圧鉄管、雨水貯留施設等大規模地下空間などの課題解決に貢献するとしている。