2025年4月10日、安藤ハザマとWorldLink&Companyは、建設現場でのデジタルツインを実現するプラットフォームを共同開発したと発表した。また、現在施工中の大規模造成工事において同プラットフォームの運用を開始し、施工管理業務での有効性を確認した。

 このプラットフォームは、点群をベースに仮想空間を構築することで現場の変化を3次元的に捉えることができる。工程情報と連携させて施工の進捗率や今後の進捗を予測して利用者に提示するなど、3次元ビューアーとしてだけでなく施工管理を支援するツールとして活用できる。

現場の仮想データ
デジタルツインプラットフォーム

 従来業務をデジタル空間に移行するデジタルツイン技術を建設現場に導入することで、データに基づく施工状況の把握・分析を行い、施工管理の省人化・省力化を図るため、独自のデジタルツインプラットフォームを開発した。

 このプラットフォームは、点群をベースに仮想空間を構築することで現場の変化を3次元的に捉えることができるほか、工程情報と連携させて施工の進捗率や今後の進捗を予測して利用者に提示するなど、施工管理支援ツールとしても活用できる。

 このプラットフォームを活用して実務でのデジタルツインの有効性を検証するため、敷地造成工事に導入した結果、現場所長や職員が現場状況を遠隔から詳細に把握し、各自の施工管理業務に役立てることができた。

【導入した敷地造成工事】

  • 掘削で発生した土砂を重ダンプで場内運搬し盛土するため、施工中に地形が大きく変化する現場

    写真:現場の様子
    対象とした造成工事現場(掘削の様子)

  • 重ダンプとの接触事故を防止するため他の現場車両の往来を制限しており、場内の移動に多くの時間を要している現場

    写真:現場の全体図
    対象とした造成工事現場全体図(場内運搬の移動経路)

プラットフォームの詳細機能・導入効果

1. 進捗管理の省力化

 現場の計測で蓄積される点群から土量の変化(出来形)を自動算出し、施工実績を管理するだけでなく現在の進捗率から今後の進捗を予想して、工程の遅延が見込まれる場合は該当工種を視覚的に目立たせ職員に対応を促すなど、リスク管理にも活用可能。

 職員は土工事における日々の数量管理や計画に対する現在の進捗率を簡便に把握できるため、従来多くの時間を要していた数量算出の業務が削減され、安全管理や施工検討に注力することができた。現場所長や工事主任は工程全体を俯瞰して進捗状況を把握できるため、遅延リスクなどへの迅速な対応が可能となった。

工種の進捗率、計画土量、出来高、出来高からの予測
進捗情報を可視化したダッシュボード画面(1)
工程ヒートマップ(各工種の進捗度合い)
進捗情報を可視化したダッシュボード画面(2)

2. 現場確認・作業打ち合わせの効率化

 現場所長が遠隔地から仮想空間に再現された現場を巡回したことで、現地への移動にかかる時間を1回あたり約80%削減した。また、毎日の作業打ち合わせでは、デジタルツインによって最新の現場状況を共有し、作業調整や指示を詳細かつ円滑に行うことで作業内容の理解度が向上し、手戻りや事故の防止につながった。

写真:打ち合わせの様子、デジタルツインで再現された現場
デジタルツインを活用した打ち合わせの様子

3. 現場データ取得の自動化による業務負荷の軽減

 日々変化する現場の地形を適時デジタルツインの仮想空間に反映するため、現場に設置した離着陸基地にドローンを格納して自動で充電・飛行計測・データ伝送を行う自動運用型ドローンや、職員が持つスマートフォンを利用した自動データ取得システムを構築。各デバイスによる計測からデータの生成、仮想空間での可視化、解析までのフローを自動化した。利用者はわずかな操作を行うだけでデジタルツインを活用できる。

 これにより、進捗管理や現場確認・作業打ち合わせを実施するための計測業務を、従来と比較して80%程度削減した。

写真:離着陸基地の上を飛行するドローン
計測デバイス(自動運用型ドローン)
写真:タブレットを使ってデータを取得する様子
計測デバイス(タブレット)

 今後、トンネル工事やシールド工事などの他工種にも適用範囲を拡大し、建設現場で幅広く活用できる汎用的なデジタルツインプラットフォームの構築を目指すとしている。