2025年10月30日、京都大学は、HTOO Kyaw Kyaw農学研究科博士研究員(研究当時)、小野田雄介同教授らのグループが、ドローンを用いた大規模な森林調査を行い、日本全国の多様な樹種(149種)のバイオマス量を推定する式を開発したと発表した。
森林バイオマスの正確な把握は、温室効果ガスの収支評価や持続可能な森林経営の基盤となるなど、大きな意義を持つ。しかし、従来の評価方法は、多様な樹種の違いが十分に考慮されてなく、現地調査の労力やアクセス面にも制約があった。
研究グループは、LiDARを搭載したドローンを用いて全国23か所で149樹種・4,326個体の高木を測定し、樹高と樹冠面積に基づいて樹種ごとのバイオマスを推定する式を構築した。これにより、人工林だけでなく樹種多様性の高い天然林でも、ドローンを用いた高精度なバイオマス推定が可能になり、炭素クレジットの精度向上や生物多様性モニタリングなど、さまざまな応用が期待される。
この研究成果は、2025年10月28日、国際学術誌「Journal of Forest Research」にオンライン掲載された。
研究者コメント
森林は巨大な立体構造をもつ生態系で、これまでは木1本の高さを測るだけでも大変な作業でした。ましてや樹冠面積の測定となると、さらに多くの時間と労力が必要でした。しかし、近年のドローンやLiDAR技術の進歩により、こうした計測が劇的に容易になりました。『昔の苦労した時間を返してほしい』と冗談を言いたくなるほどですが、このような先端技術をうまく活用することで、森林資源の評価が格段に効率化され、研究の発展だけでなく、生物多様性の保全、持続可能な林業の推進、さらには地方の活性化にもつながることを期待しています。
