2025年6月16日、石川県加賀市は、ボーイング子会社のWisk Aero(ウィスクエアロ、以下Wisk)、およびJALエンジニアリング(以下JALEC)と、日本における無操縦者航空機の社会実装と関連法制度確立に向けた実証飛行に関する基本合意書を締結したことを、パリ航空ショーで発表した。

 この締結により、JALECの航空運送事業や航空機整備に基づく技術的知見と、自律飛行の空飛ぶクルマ機体開発に取り組むWiskの技術、国家戦略特区に認定され実証フィールドを提供する加賀市が連携し、地方創生に向けた新産業イノベーションの創出を目指す。

6人の集合写真
加賀市への視察時の写真。左から、JALEC 事業推進部 大丸裕真氏、Wisk Manager Marketing Development Dan Parsons氏、JALEC 事業推進部 マネジャー 脇川達人氏、宮元 陸 加賀市長、Wisk Director APAC Phil Swinsburg氏、Wisk Director of GTM & Marketing Programs Jeannie Lam氏

 Wiskが開発する機体は、パイロットが搭乗せず自律的に飛行する空飛ぶクルマ。パイロット不足の課題解決や移動の自由度を拡大させるものとして、特にパイロット確保が困難な地方において実装が期待されている。

 一方、運航形態が従来の航空機とは大きく異なるため、関連する法整備および運航環境の確立が社会実装には不可欠である。

 そこで今回、国家戦略特区の加賀市で実証飛行を行い、技術的なエビデンスを積み上げて制度設計の加速につなげること、および空の産業エコシステムの構築に向けて3社が連携することで合意した。

【直近の主な動向】

2023年5月JAL、JALEC、Wiskの間で無操縦者航空機の日本での社会実装を目指す基本合意書を締結
2024年10月加賀市とJALの間で包括連携協定を締結
2024年11月加賀市次世代エアモビリティコンソーシアムを設立
2025年5月パイロット・プロジェクト「エアモビリティ・ベースin加賀」の立ち上げ
2025年6月加賀市、JALEC、Wiskの三者間で基本合意書を締結
エアモビリティベース(加賀市)

各社コメント

加賀市 宮元 陸 市長

 加賀市は、Wiskの日本展開の第一弾として、事業拠点の設立を強力に支援するとともに、JALECと連携し、AAM(次世代空モビリティ, Advanced Air Mobility)の運用モデルの構築を支援します。加賀市は北陸で唯一の国家戦略特区の認定を受けており、大胆な規制改革の提案を行うことが可能です。東京や大阪のような大都市ではないものの、研究開発に挑戦できる環境の自由度が比較的高く、ルールメイキングをともなう新規事業開発への創造的挑戦を受け入れます。また本市の基幹産業の一つである部品メーカーを中心とするものづくり産業と融合した新しい産業構造への変革にも期待します。

JALEC 秡川宏樹 事業推進部長

 本連携は、日本社会における自律飛行の空飛ぶクルマの社会実装において非常に重要な役割を担うものと考えます。JALECは、Wisk、加賀市との連携のもと、パイロットのいない空飛ぶクルマという革新的技術の実証飛行と技術的検証を実施し、安全・安心な未来の空の移動手段の実現を目指します。

Wisk Sebastien Vigneron CEO

 加賀市との新たな協業を通じて、日本へのコミットメントを深め、JALとのパートナーシップをさらに強化できることを大変嬉しく思います。日本はAAM(次世代空モビリティ, Advanced Air Mobility)導入の重要な市場であり、国家戦略特区である加賀市の未来のモビリティに対する先進的なアプローチは、当社の開発する第6世代機(※1)の実用性を検証するための理想的な環境であると考えます。本連携は、日本における自律飛行の運航環境の構築に向けた重要な一歩です。


※1 第6世代航空機の仕様(出所:Wisk https://wisk.aero/aircraft/

OperationAutonomous w/Human Oversight
Safety TargetsSimilar to commercial aircraft
Seats4
Dimensions<50 Ft. Wingspan
Range90 Miles (w/Reserves)
Speed110–120 Knots
Charging Time15 Minutes
StorageCarry-on and Personal Items
写真:機体外観
写真:機体内部