2025年6月11日、Liberaware(以下、リベラウェア)は、神戸市の公共下水道管において、小型点検ドローン「IBIS2」を活用した約600mにわたる調査を実施したとを発表した。

 この取り組みは、2025年5月30日に北九州市内で実施したIBIS2による調査に続く下水道管調査事例の1つとなる。

写真:スタッフがIBIS2をマンホールから下水道管内に下ろす様子

 国土交通省によると、2023年度末における全国の下水道管渠(かんきょ)の総延長は約50万kmにおよび、標準耐用年数である50年を経過した管渠は総延長の約7%にあたる約4万kmとされている。20年後には約42%の約21万kmまで増加すると見込まれている。(※1)

 2025年1月に埼玉県八潮市で下水道管路の破損に起因すると考えられる道路陥没事故が発生し、当該事案を受けて国土交通省が7都府県13か所の流域下水道管理者に緊急点検を要請するなど、老朽化した下水道管に関する点検体制の構築が急務となっている。

 神戸市では、目視やテレビカメラ(自走式・浮流式など)による下水道管調査を進めていたが、水量・堆積物が多い場所や硫化水素などの有毒ガスが生じる場所など、従来の調査手法では調査が困難な管渠が存在したため、リベラウェアのドローンを用いた調査を実施することとなった。

※1 国土交通省:下水道の維持管理
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html

調査概要

 人が踏み入れることが難しい場所でIBIS2を飛行させるドローン調査を実施した。口径1,800mm、水位約50cmの汚水管内で、作業員が立ち入ることなくドローンを飛行させ、撮影した動画をもとに下水道管の調査を行った。

 現地調査は、降雨の状況下においても、1日で約600m(6スパン)の撮影に成功した。今回の調査結果を踏まえ、従来手法(目視・自走式テレビカメラ)の調査項目を参考に異常判定可能な項目を整理することで、下水道管の詳細調査手法としての活用モデルを構築し、活用可能性の提案をしていく。

 下水道管調査の実績が豊富な大幸道路管理の協力のもと、IBIS2で撮影した素材をもとに異常判定などを行った調査結果を神戸市へ提出する。

【各者役割】

神戸市発注者、下水道管点検における課題面の提示
大幸道路管理協力業者、点検プロセスの構築、現場支援、および調査提案、報告書作成
Liberaware請負人、ドローンの開発・製造・ドローンオペレーター援助・現場支援
写真:IBIS2が入ったカゴをマンホールから吊り下げる様子
下水道管に「IBIS2」を進入させる様子

 リベラウェアは、この活用事例は下水道インフラ点検におけるIBISの標準的活用モデルの確立に直結するものであり、IBISの運用標準化により老朽化したインフラ維持管理の課題解決に貢献するとしている。

 今後、下水道管調査における多数の活用事例が蓄積されることで、IBISの運用フローや点検精度、データの再現性が評価され、下水道調査におけるドローン活用のガイドライン整備や制度化へとつながることを期待するとともに、全国的なインフラ点検市場における標準機材としての地位確立を狙う。