豊田通商と、その子会社でドローン物流配送事業を行うそらいいなは、2025年2月10日、長崎県五島市玉之浦地区において、ドローンのレベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)による処方薬配送の実証実験を実施した。

写真:飛び立つドローン
診療所から離陸するドローン

 そらいいなでは、2022年5月から五島市において、本土から直接アクセスできない二次離島へ医療用医薬品などの配送を、固定翼型ドローンを用いたレベル3飛行(無人地帯における目視外飛行)で行っている。事前に設定した港などの無人地帯にパラシュートで荷物を投下するため、受取人は指定場所まで荷物を取りに行く必要がある。

 家庭や医療機関の軒先といった有人地帯へ直接配送するにはレベル4飛行が求められる。しかし現在は、国土交通大臣から事前に飛行経路を特定した許可・承認を得ているため、配送先数の増加に応じて申請経路数も増加することとなり、社会実装に向けた課題がある。

 今回の実証では、ドローンによる目的地軒先へのオンデマンド配送体制の社会実装を目指したレベル4飛行の実証に加え、技術面および運用面での課題の抽出などを行い、将来的にレベル4飛行の飛行経路の申請をエリア単位で実施するための要件などを整理する。

現状:経路ごとに許可・承認発出、今後の方向性:エリア単位での許可・承認発出可

 五島市では2023年から、移動が困難な患者向けに医療機器を備えたモバイルクリニックが患者の自宅まで出向き、同乗する看護師と診療所内の医師が連携したオンライン診療を行っている。処方薬は、看護師が患者に渡すことはできないため、診療所のスタッフが翌日個別に配送している。

 今回、マルチコプター型ドローンを使用し、診療後すみやかにレベル4飛行で診療所からモバイルクリニックの軒先まで処方薬を配送する実証を行った。

 内閣府が連携”絆”特区として定める長崎県・福島県を対象とした「令和6(2024)年度 先端的サービスの開発・構築及び規制・制度改革に関する調査事業」の一環として、長崎県および五島市の協力のもと、ACSL、長崎大学、MONET Technologiesと共同で実施した。

 今後、エリア単位での飛行経路の申請を実現するため、実証の効果・課題の検証を行うとともに、行政との協議を進めるとしている。

概要図:ドローンのレベル4飛行による目的地軒先へのオンデマンド配送体制
写真:着陸使用としているドローン
モバイルクリニック前に着陸するドローン

【各社役割】

豊田通商・調査事業全体とりまとめ
・規制・制度改革案協議
そらいいな・実証現場整備
・配送オペレーション補助
ACSL・レベル4飛行対応機体提供
・レベル4飛行オペレーション
長崎県・規制・制度改革案協議
五島市・モバイルクリニック連携協力
・玉之浦診療所運営
長崎大学・医療関係者間協議補助
・処方薬配送効果検証
MONET Technologies・モバイルクリニック車両開発
・連携協力


【使用機体】

写真:PF2-CAT3
機体名PF2-CAT3
外寸1.174mm×1,068mm×601mm(プロペラ含む)
機体重量8.8kg
最大飛行時間17.5分(最大離陸重量時)
最大離陸重量9.8kg
積載量最大1.0kg
最大飛行速度水平10m/s(36km/h)、上昇3m/s、下降2m/s