2025年1月29日、東北ドローンは、東北電力ネットワーク岩手支社通信センター(以下、東北電力ネットワーク)から依頼を受け、岩手県内の無線中継所においてドローンを活用した物資輸送の実証試験を実施したことを発表した。急勾配の山道での人力運搬作業を効率化し、安全性を向上させることが目的。

写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン
高差は200m。ドローン搭載のセンサーで対地高度150m以内を確認しながらフライトを実施。

 東北電力ネットワークでは、電力の安定供給に必要な専用の保安通信を確保するため、定期的に通信電源用バッテリーや燃料などの資材を人力で運搬することがあり、作業者の身体的負担や運搬効率の低下が課題であった。

 東北電力ネットワークからの依頼により、東北ドローンは物資輸送専用ドローン「DJI FlyCart 30」を導入し、ドローンを活用した物資輸送の実用性と安全性の実証実験を実施した。

実施期間2024年11月
場所岩手県内無線中継所
使用機材DJI FlyCart 30(ウインチシステム搭載)
輸送物資無線中継所の維持に必要な資材や作業用工具類等

 実証試験では、ドローンにウインチシステムを搭載し、着陸せずに物資を受け渡すことで、地形や環境に左右されない効率的な物資輸送を実現した。

 ドローンを活用することで、急勾配の山道を往復する必要がなくなり、物資輸送にかかる時間と労力を大幅に削減。従来は数時間を要した作業を30分未満に短縮し、作業者の負担を軽減することができた。

 また、作業者の危険な環境での長時間作業が減少し、安全性の向上が期待される。ウインチシステムを用いた空中輸送は、高密度に樹木が生える着陸困難な場所でも正確で安定した物資運搬が可能である。

写真:緑の木々に囲まれた荷受け地点。上空から吊り下げられた荷物
夏季の荷受け地点
写真:葉が落ちた木々の中の荷受け地点。上空から吊り下げられた荷物
秋季の荷受け地点
写真:ドローン搭載カメラの映像。ふもとの荷受け地点
飛行エリアや地権者などの許可を取得し、麓の安全な場所へ輸送を実施
写真:ふもとの荷受け地点で飛行するドローン、作業スタッフ2人
ウインチシステムを使った輸送
写真:ドローン搭載カメラの映像。上空を飛行する様子
対地高度をリアルタイムに確認しながら飛行

 今回の実証では、ドローンのフライト時間が約17分、充電時間が約1時間必要であった。作業効率を人力の運搬作業と比べた場合、短距離・中距離ではドローンが優位となる。一方、フライト時間の制約と充電時間の長さにより継続的な運搬作業の実施には改善が求められる。

【改善策】

  • 複数台のドローンを同時運用する体制の構築
  • 効率的な運行計画を立案するための運行管理システムの導入
  • バッテリー交換式運用や急速充電技術の採用

 今後同社は、山岳地帯や災害現場における迅速な物資輸送手段として、ドローンの活用を推進し、災害時の救援活動の効率化と支援範囲の拡大を目指す。また、ドローンを活用した企業向け輸送ソリューションの提供や、サービスソリューションの拡充を進めるとしている。

写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン
最大ペイロードを搭載するテストも実施し、安定したフライトを行った。
写真:荷物を吊り下げて飛行するドローン