ロジクトロンは、2024年10月11日に埼玉県さいたま市南区の人口集中地区(DID)上空において、最大離陸重量25kg以上のドローンを使用したパイロットロープの架線業務を実施した。

写真:飛行するドローン
パイロットロープを受け渡す様子

 鉄塔の建て替え工事に伴い、新設された鉄塔と既存の鉄塔の間に高圧電線を架線するためのパイロットロープを設置するにあたり、高所作業車を用いた地上からの架線工事が困難なため、ドローンを使用した架線を実施した。

 架線業務では、高圧送電線の鉄塔間に電線を渡すために、まず細い延線ロープ(パイロットロープ)を架線し、徐々に太いロープに交換していき、最終的に送電用の電線に差し替える。今回は、このパイロットロープの架線にドローンを活用した。

飛行ルートを示した地図
住宅地上空や小学校敷地を通過する飛行ルート

【径間A】

 新設鉄塔直下から離陸し、105m離れた既存鉄塔最上部にいる作業員がパイロットロープをドローンに接続。再び新設鉄塔まで牽引し、最上部の作業員に受け渡した。飛行ルートの直下には住宅地が広がっている。

【径間B】

 新設鉄塔直下から離陸し、鉄塔最上部の作業員によりパイロットロープを接続。363m離れた既存鉄塔まで牽引し、作業員に受け渡した。飛行ルートの下には小学校と住宅地が含まれる。

 延線業務に使用したドローン「DJI FlyCart 30」は、各種センサーにより重い荷物を搭載しても安定した飛行が可能で、万が一の墜落に備えてパラシュート装置を搭載している。

写真:離陸するドローン
DJI FlyCart30が離陸する様子

DJI FlyCart30(ウインチモード)

サイズ2800×3085×947 mm(長さ×幅×高さ)
最大飛行時間18分(重量負荷30kg/デュアルバッテリー使用時)
搭載重量40kg(シングルバッテリー)/30kg(デュアルバッテリー)
動作環境温度-20~45°C
安全性能保護等級IP55および耐腐食性/レーダー/両眼ビジョンシステム/インテリジェント障害物検知/デュアルバッテリー/非常用パラシュート

 高所作業車を使って地上の障害物を避けながら架線業務を行うのが難しい場合、従来はヘリコプターによる架線か、ペットボトルロケットや小型ドローンで細いリード線をパイロットロープとして架線し、ラインを徐々に太くする方法が一般的であった。大型ドローンの活用により、断線しにくい丈夫なロープを使用することで、後工程の作業を大幅に短縮できる。

当日の様子

 径間Aの作業では、離着陸地点からドローンが105m先の鉄塔に飛行し、延線用ロープを機体に接続。その後、再び105m飛行し、新設鉄塔に延線ロープを届けた。輸送に要した時間は約4分、離陸から着陸までの作業時間は約10分で、従来の高所作業車を使用した作業に比べ、大幅に時間を削減できた。

 径間Bの作業では、新設鉄塔から延線ロープを接続後、363m先の鉄塔に飛行。飛行経路には小学校の校庭(その間、児童は校庭に出ないよう依頼済み)、および複数の道路を含むため、技術力の高い操縦者と補助者による連携で繊細な飛行を行った。作業時間は径間Aよりも長くなったが、全体で15分程度に収まった。

 今回の作業により、ドローンを活用した架線業務の効率性と、住宅が密集する地域でも安全に作業ができる可能性を確認した。

写真:鉄塔を上から見た様子
鉄塔上空の様子
写真:飛行するドローン
パイロットロープの切り離し作業
ドローン延線業務ダイジェスト動画
架線工事用パイロットロープの敷設を説明するイラスト
【参考】ロジクトロンの架線工事用パイロットロープ敷設業務