2024年11月27日、KDDI、KDDIスマートドローン、日本航空(以下、JAL)、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)、ウェザーニューズ、メディセオの6社は、2024年10月21日から11月7日まで、東京都西多摩郡檜原村において、医薬品をドローンで配送するビジネスの社会実装に向けた実証を実施した。
この実証は、東京都「ドローン物流サービスの社会実装促進に係る実証プロジェクト」に基づき、都心部におけるドローン物流サービスの早期社会実装を目指すもの。実証プロジェクトは2022年5月に開始し、3か年の計画でドローンを活用した医薬品配送ビジネスモデルの業務フローの策定と検証を行ってきた。
最終年度となる2024年度の本実証では、人口密集地である都市部でのサービス実装に向けて、檜原村においてサービス実装時に配送する稀用医薬品の管理体制と、JALが航空機運航の際に操縦者をはじめとする運航に携わる者に対して行うCRM(※1)訓練をドローンの運航に導入し、より高い安全性を確保したオペレーション体制の検証を実施した。
実証を通じて、高い安全性を確保した上での稀用医薬品のドローン配送の検証が完了し、都心部でのドローンによる医薬品配送ビジネスモデルの実現性が高まった。
今後6社は、実証で得た検証結果をもとに、都心部でのサービス実装に向けて法制度に適合した機材の検討など、ドローンによる医薬品配送ビジネスモデルの社会実装を目指す。
※1 CRM:Crew Resource Management。安全運航のため、利用可能なすべてのリソースを有効かつ効果的に活用し、チームメンバーの力を結集してチームの業務遂行能力を向上させるという考え方。
実証について
檜原診療所と特別養護老人ホーム桧原サナホームを結ぶ第三者上空を含む飛行ルートで、物流用ドローンの自動操縦により稀用医薬品の保存に使われるアンプルを配送し、オペレーションの検証を行った。
レベル3.5飛行とレベル4飛行で運航し、レベル3.5飛行では、多数の医薬品を短時間で効率的に配送するため、1人の操縦者に対して2機のドローンを同時に運航する1対2運航での効率性を検証した。レベル4飛行では、都心部でのサービス実証を見据え、操縦者をはじめとする運航に携わる者に対しCRM訓練を導入し、より高い安全性を確保したオペレーションの検証を実施した。各運航は、東京都千代田区のKDDIスマートドローンのオフィス内に設置した運航管理室より遠隔で行った。
【検証項目】
・ CRM訓練を導入したオペレーション体制の構築と課題抽出
・ 1対2運航での医薬品配送における課題抽出
・ 遠隔オペレーション体制時の課題抽出
検証の結果、構築した手順および体制が問題なく運用でき、安全性の向上および効率的な配送の検証を確認した。
【実施日時】
・ 2024年10月21〜25日:レベル3.5飛行(1対2運航)
・ 2024年11月5〜7日:レベル4飛行
【飛行ルート】
檜原診療所~桧原サナホーム(約2.4km)
【使用機体】
・レベル3.5飛行/ACSL社製「AirTruck」
ACSLとエアロネクストが共同開発した物流専用ドローン。4D GRAVITYにより荷物の揺れを抑え安定飛行を実現。
全長 | 1.7m×1.5m(展開時) |
高さ | 0.44m |
最高飛行速度 | 10m/s |
最大航続時間 | 35分(最大離陸重量時) |
最大ペイロード | 5.0kg |
最大離陸重量 | 24.9kg(ペイロード含む) |
・レベル4飛行/ACSL社製「PF2-CAT3」
PF2をベースとした、第一種型式認証取得機体。
全長 | 1.2m×1.1m(展開時) |
高さ | 0.60m |
最高飛行速度 | 水平10m/s |
最大航続時間 | 17.5分(最大離陸重量時) |
最大ペイロード | 1.0kg |
最大離陸重量 | 9.8kg(ペイロード含む) |
【各社役割】
KDDI | ・プロジェクト全体取りまとめ |
KDDIスマートドローン | ・スマートドローンプラットフォームの提供 ・レベル4飛行における機体運航業務 |
JAL | ・ドローン物流ビジネスの策定・評価検証 ・CRM教育訓練の提供 ・ドローン運航におけるリスクシナリオの特定・評価・対策 |
JR東日本 | ・都民に向けた社会受容性向上の推進 |
ウェザーニューズ | ・安全運航のための気象データ提供および助言 |
メディセオ | ・ドローンを利用した医薬品配送手順の策定および検証 |
ビジネスモデルの検証
医薬品の管理について、通常は各病院が備蓄して使用しており、特に使用頻度が少ない稀用医薬品については使用期限による廃棄ロスが多いという課題がある。これを医薬品卸会社の倉庫などで一元管理することにより、稀用医薬品の在庫数を削減し、廃棄ロス減少を実現して収益性を高める。また、緊急を要する医薬品配送において、ドローンを活用することで病院への効率的な供給サービスを構築する。
効率的な受注から納品まで一気通貫の配送フローの検証を実施。その結果、医薬品配送の発注から荷物の受領までのドローンによる配送業務フローのプロセス構築を行い、ロールプレイの実施により精微化し、実装に向けた体制構築した。