2024年10月3日、テラ・ラボは、航空管制区域を飛行可能とする長距離無人航空機(固定翼)の運用コンセプト(ConOps)を取りまとめたことを発表した。

 同社は長距離無人航空機「テラ・ドルフィン」による危機対策オペレーションシステムの研究開発を行うスタートアップ企業。テラ・ドルフィンは、2019~2021度、地域復興実用化開発等促進事業補助金(福島県)を活用し、「衛星通信を活用した長距離無人航空機による大規模な災害発生時における高高度広域三次元モデル生成を可能とする情報共有システムの実用化に向けて」を開始。2021年11月、自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金を活用し、福島県南相馬市復興工業団地内に長距離無人航空機の実用化・事業化拠点「TERRA LABO Fukushima」を整備した。

飛行する「テラ・ドルフィン Long Range Model」のイメージ
長距離無人航空機「テラ・ドルフィン Long Range Model」
TERRA LABO Fukushimaの外観
TERRA LABO Fukushima。福島ロボットテストフィールドの滑走路と直結している。
TERRA LABO Fukushimaの図面
TERRA LABO Fukushimaは、長距離無人航空機を4台常時運用可能。管制室は情報共有基盤を整備。

 同事業では、有人航空機と同じ空域(航空管制区域)の飛行を実現するため、機体の構造や通信装置、制御装置、観測装置などを検証しながら、無人航空機に既存産業の技術を応用した廉価なサプライチェーンの調査を行うことで、技術面、製造面の課題の洗い出しに取り組んできた。

 一方、航空法における無人航空機が飛行できるエリアは、有人航空機との干渉が少ない高度150mとされている。2023年12月、航空法改正により人口密集地上空の飛行(レベル4)が認められるようになったが、高度150m以下が前提であり、無人航空機による航空管制区域の飛行の実現には、技術面に加えて国の制度面にも課題がある。

航空機の航行の安全に影響をおよぼすおそれがある空域、人または家屋の密集している地域の上空(レベル4の領域)を示した図

 そのため同社は、無人航空機の航空管制区域内飛行を実現するため、有人航空機と同様に無線システムを搭載し、エリアごとに割り当てられた周波数を使い、音声等で航空機同士・地上管制とのATC(Air Traffic Control)や無人航空機の遠隔操縦システムであるRPAS(Remotely Piloted Aircraft System)の検証を始め、国際基準の安全性等に適応するためのConOps(運用コンセプト)を取りまとめた。

RPASが有人航空機や航空交通管制などと交信する様子を示した図
無人航空機の遠隔操縦システム(RPAS)と航空交通管制(ICAOの資料をもとにテラ・ラボが作成)

 テラ・ラボは、災害対策で得た知見をもとに、民間技術を防衛転用するため、防衛省・自衛隊が開催する意見交換会や講演会などを通じてアジャイル開発を進める体制を構築。2024年4月、装備品製造等基盤事業者として防衛大臣の認定を受けた。

 今後は、TERRA LABO Fukushimaにおいて、東日本大震災の復興の一環として雇用を創出しながら、愛知県営名古屋空港に飛行試験開発拠点と危機対策オペレーションセンターを整備し、平時・有事のデュアルユースを実現できる体制の構築を目指すとしている。