2024年8月19日、パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、2023年度に国土交通省より受託した「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証に関する調査業務」を実施し、成果報告を行ったことを発表した。

 同事業では、9つの事業者がドローンを活用したラストワンマイル配送を社会実装するため、全国9地域で「レベル4飛行(有人地帯における目視外飛行)」「ドローンポートとの連携」「自動配送ロボットとの連携」「新たなモビリティとの連携」に関する実証実験を行った。

 パーソルP&Tは実証実験の成果を取りまとめ、コスト比較、CO2排出量削減効果、4つの観点(事業面、技術面、制度面、社会受容性)から整理を行い、ラストワンマイル配送の社会実装に向けて、サービス事業者や行政、サービス利用者による主体的なアクションにつなげるためのシナリオをまとめた。

調査報告サマリー

 既存の配送方法に対して、3つのフェーズ(配送時、実証時、実運用時)に加え、1人の操縦者が多数の機体を運航管理する“一対多運航”を実施した場合のコスト削減効果を検証した。具体的には、以下2パターンを想定して試算を行った。

レベル4飛行:規制緩和による補助者や操縦者の人件費削減
ドローンポートとの連携/自動配送ロボットとの連携/新たなモビリティとの連携:配送物の積み下ろしやユーザーへの受け渡しにかかる人件費削減

 その結果、レベル4飛行では実運用時において、ドローンポートとの連携では多運航時において、既存方法の配送コストを2割程度削減できる可能性があることがわかった。

 それぞれのフェーズにおけるコスト遷移を算出した結果、レベル4飛行では1対多運航の実現によりさらなるコスト削減が可能であり、新たなモビリティとの連携では、1対多運航だけでは十分なメリットを得られないため、宅配車両との共同利用や乗客が使用しない空きスペースを貨物輸送に活用することでさらなるコスト削減が期待されることがわかった。自動配送ロボットとの連携、ドローンポートとの連携では、初期費用が高いため、自動配送ロボットを含めた多運航が求められる。

 また、従来の車両等を用いる配送を全てドローンで代替した場合、CO2削減率は76.5%と高い効果が算出された。今後、ドローンで運搬できる貨物などの重量が増えることや機体の耐風・耐水機能の強化により、年間を通じた運航率の向上が期待されるため、さらに高い削減率になると見込まれる。

 パーソルP&Tは、各事業の社会実装に向けて解決すべき課題や想定される解決策、期待される効果を網羅的に把握するため、コスト分析や事業継続性などの「事業面」、機体やシステムの実用性などの「技術面」、法制度や運用ルールなどの「制度面」、他地域への展開可能性などの「社会受容性」の4つの観点から、各実証事業の成果・課題を下図のように整理した。

4つの観点(事業面、技術面、制度面、社会需要性)から「現状」「2024-2026年」「2026年以降」の成果・課題をまとめて表した図

▼無人航空機等を活用したラストワンマイル 配送実証に関する調査業務最終報告
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001731601.pdf

パーソルP&T ビジネスエンジニアリング事業部 ドローン・MaaSソリューション3部 社会実装支援G マネジャー 岡田 健司 氏のコメント

 本事業では、ドローン物流サービスの社会実装に向けて、実証事業のサポートおよび実証結果の分析、成果の取りまとめを行いました。

 この取り組みは、日本が追求するデジタル化社会の実現に向けたアナログ規制緩和の活動の一環となります。

 ドローン・MaaSソリューション部では、労働人口減少などの社会課題に対する解決策の実装に向けて、ドローンやMaaSなどのデジタル技術が持つ可能性を見極め、法規制の緩和やコスト面などのビジネスモデルの観点についても取り組みを継続し、ドローン等デジタル技術の社会実装を目指してまいります。