パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)とPwCコンサルティングは業務提携契約を締結し、主に建設や物流業界でドローン事業を推進する企業向けに、事業アセスメントから定着をワンストップで協働支援するサービスの提供を、2024年8月8日より開始した。

 同サービスでは、ドローン活用の検討プロセスにおいて「ビジョン・体制・インフラ・オペレーション・リスク対応」の5つの観点から実現可能性を評価し、課題に応じたアクションの策定を低コストでサポートする「ドローン事業のアセスメントサービス」と、アセスメントサービスで行った分析から実現性の高い計画の策定を行い、その計画に基づいた運用を両社が協働で支援する「ドローン事業の定着推進サービス」を提供する。

サービスの概略図。

 両社は建設や物流業界などが抱える課題に対し、ドローン事業の推進に必要なソリューションを提供してきた。今回の業務提携は、ドローン活用の効果創出に向けたオペレーション・体制構築などの実行力を持つパーソルP&Tと、ビジョン策定やインフラ整備に強みを持つPwCコンサルティングが、ドローンを活用する事業を立ち上げる企業が実用化までに抱える課題の克服を支援するサービスを協働で開発、提供することを目的としている。

サービスの詳細

【ドローン事業のアセスメントサービス】
 一次アセスメントは無料で提供する。企業が簡易的なアンケート形式の設問に回答することで、自社のドローン事業に加えるべき観点を5つの評価軸で分析し、レーダーチャートにより課題を可視化する。また、レーダーチャートに表れた課題を掘り下げる詳細アセスメントに回答することで、問題の原因を明らかにする。その後、試行的な事業分析・コンサルティングを、通常のコンサルティングサービスと比較して安価に受けることができる。

「ビジョン」「体制」「インフラ」「オペレーション」「リスク対応」の5つの項目についてのレーザーチャート(現状評価結果・例と、事業者に応じた目標値)

【ドローン事業の定着推進サービス】
 アセスメントの結果を踏まえ、実現性の高い計画づくりと計画に基づいたドローン活用を実現していくため、コンサルタントがサポートしていく。ドローン事業のアセスメントサービスの結果から推奨するサービス内容を提案するが、企業の要望に応じてサービス導入範囲を区切り、検討することが可能。

 通常、これらのコンサルティングサービスでは、現状分析からビジョン策定、リスク分析・対策立案までを一括して行うことが多く、事業立ち上げ初期にはコスト面でサービスを受けにくい企業が少なくなかった。同サービスでは、現状分析(一次アセスメント、詳細アセスメント)までを受けやすくするほか、導入するサービスの範囲を区切ることで、ドローン事業において企業が抱えやすい課題に対策を講じながら事業を推進することができる。また、ドローン事業を実用化している企業についても、今後発生しやすい課題の把握につながるサービスとなっている。

協働サービス開発の背景

 日本国内におけるドローンサービスの市場規模は拡大傾向にある一方、物流業界については、ドローンの性能や安全装置などの問題により規模の拡大が限定的だった。2022年度に有人地帯における目視外飛行(レベル4)が始まったことで、PoC(Proof of Concept:概念実証)のフェーズから社会実装が進んでいくことが期待されている。

ドローン市場規模予測(点検、物流、農業、測量、空撮、その他サービス)の積み上げ棒グラフ(Y軸が金額、X軸が年度)。年平均成長率は約38%。
ドローン市場規模予測(インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2024」をもとにPwCが作成)

 建設・建築業界や物流業界などでは、ドローン活用による多くのメリットが期待されているが、ドローン事業は高度な知見とスキルが必要なため、事業立ち上げ後に課題を抱えやすい。また、将来の人手不足が懸念される中、テクノロジーを活用することで、生産性向上と他職種からの人材移動が期待される。

各業界の労働需要・労働供給人数を比較した棒グラフ。
産業別にみた人手不足(パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」)

 パーソルP&Tが2024年5月に発表した「ドローンユーザーとMaaSに関する動向調査」では、ドローン活用で抱える課題として「スキル不足、導入や運用のコスト」が上位となり、これらの課題解決にあたって外部から提供を受けたいサービスとして「リサーチ/コンサル、人材育成、プロジェクト/運航/安全管理」が挙がっている。

調査結果の一覧表。
ドローンの業務利用にあたり、課題の解決策として期待されるサービス(複数回答)

各社コメント

パーソル プロセス&テクノロジー ビジネスエンジニアリング事業部
ドローン・MaaSソリューション部 部長 前田 晋吾 氏

 ドローン業界では、新たなテクノロジーを課題解決に活用するにあたり、様々な観点から付加価値を発見したり、高めたりしながら社会実装を進めています。

 一方で、パーソルP&Tで実施しているドローンユーザー動向調査の結果では、自社業務にドローンを活用する際に課題を抱え、解決するために期待されているサービスとして、「リサーチ/コンサル」、「人材育成」がトップにくる結果が続いていることから、多くの事業者が、目標設定や課題特定に苦慮されているといった傾向が続いていることがわかります。

 今回のパーソルP&TとPwCコンサルティングの業務提携では、両者で培ってきたノウハウを元に、ドローン活用を始める上での事業分析や、すでに社内事業を立ち上げて活用を進めている事業者様にとっても、改めて中長期的な成功に繋がっているのかを見直していただくきっかけになるようにサービス設計をしています。

 本サービスを活用いただくことで、ドローンを活用する業務環境が増え、生産性向上を実現し、産業別に発生しうる人手不足の課題解決に繋がっていくことを期待しています。

 また、総合人材サービスを提供する当社としては、ドローンのような新たなテクノロジーをスキルとして習得した人材が産業を跨いで活躍する、人材流動の促進を担えるようにサービスを発展させていきたいと考えています。

PwCコンサルティング Technology & Digital Consulting
執行役員 パートナー 岩花 修平 氏

 自社業務の生産性向上を目指して、ドローン活用を検討されている事業者様が数多く見られるものの、期待値に見合う成果を上げている事例は残念ながら多いとは言えない状況と捉えています。一方そのような事業者様が抱えている課題には類似した傾向があると分析しています。パーソルP&TとPwCコンサルティングが協働で提供する本サービスにより、短期間で課題を特定し明確化できるようになることで、目標達成へのリードタイムも短縮できると期待しています。この取り組みを通じ、ドローン活用がより多くの企業で進むとともに社会実装への一助になれば幸いです。