2025年1月17日、日本UAS産業振興協議会(以下、JUIDA)は、災害現場でのドローン活用を効果的に支援する「ドローン防災スペシャリスト教育講座」を開始したことを発表した。

 災害現場におけるドローン活用体制をさらに強化し、防災力向上に貢献することを目的としており、ドローン操縦資格の有無にかかわらず、災害現場で調整や統括を担う人々に必要な知識とスキルを提供する。自治体職員、防災関係者、災害支援に携わる地域住民等、広く対応した内容となっている。

 講座を修了した受講生は、災害現場での実務的な対応から、平時における防災体制の構築や訓練まで、多方面での活躍が期待される。

ドローン防災スペシャリスト教育バナー画像

災害時のドローン活用での課題

 被害状況の把握や支援物資の輸送、防犯領域での使用など、災害支援でのドローンの活用が広がってきている。

 2024年の能登半島地震や能登豪雨水害といった大規模災害では、JUIDAや多くのドローン事業者が現地で支援活動を実施。能登半島地震の際は、自治体や自衛隊等と連携し、ドローンを用いた大規模かつ組織的な活動を展開した。これらの活動を通じて、災害時にドローンを効果的に活用するための課題が明らかになった。

【課題1】現場での適切な役割分担と運用調整の必要性
 ドローンを活用するには、操縦者だけでなく、関係機関や自治体との運用調整を担う専門的な役割が重要。この調整役は、災害現場の状況を把握し、機体や操縦者の選定、飛行ルートの計画などを取りまとめる。

【課題2】災害時の法令知識の不足
 災害時には「災害対策基本法」「航空法」といった法令に基づく適切な対応が求められる。一方、これらの法令について十分な理解を持たない場合、支援活動を効率よく進められない状況が発生することがある。

【課題3】多くの機関や団体、それらのメンバーとの連携に必要なスキルの不足
 自治体や防災関係者、ドローン事業者間のコミュニケーション不足が、現場での混乱を招く要因となる場合がある。特に、災害時のニーズに即した機体選定や飛行計画の策定には、これらの関係者をつなぐ調整役が欠かせない。

 こうした課題を踏まえ、ドローン防災スペシャリスト教育講座では、ドローンの運用調整や、現場でのドローンを用いた災害支援活動の統括スキル、関係法令の知識等について、幅広く学べる内容を提供する。

講座の特徴

 ドローン操縦者以外も受講が可能。今後、災害現場で調整や統括の役割を担う人々を対象に、ドローンの活用を支援するための知識とスキルを提供する。自治体や関係機関内外での調整役として活躍できる人材を育成し、全国的な災害支援体制の構築に貢献する。

 災害現場でのドローンを用いた災害支援活動における役割分担や、調整業務を担うために必要な知識やスキルを重点的に取り上げており、地域でのドローンを用いた防災活動に積極的に参加したい住民にも適した内容となっている。

受講対象(例)

  • 自治体職員や防災関係者
  • 自衛隊、警察、消防、海上保安庁、DMATの職員
  • 自主防災組織や消防団員
  • ドローン事業者や操縦者
  • その他、防災や災害支援活動に関心を持つ人

習得できる知識・スキル

災害時におけるドローン運用調整スキル

  • 災害現場でのドローンの効果的な運用計画の立案
  • 必要な機体や操縦者の選定、適切な役割分担の設定

連携における調整力

  • 自治体、自衛隊、警察、消防、海上保安庁など、関係機関との連携を円滑に進めるためのポイントについて
  • 災害時の各機関の役割や業務内容を理解し、調整役として活躍するためのスキル
  • 複数の関係者と共通の目標を持ち、効果的に協働できるマネジメント力

災害時に適用される法令の知識とその活用方法

  • 「災害対策基本法」「航空法」など、ドローン運用に関わる法令の理解
  • 緊急時に必要な手続きや、法令を遵守しつつ柔軟に対応するための知識
  • 法令に基づいた正確な意思決定と調整ができるスキル

災害発生前の準備と事前計画策定能力

  • 災害発生前に行うべきドローン運用体制の構築スキル
  • 必要な機材等の事前準備、防災訓練プログラムの計画と実施のための知識
  • 災害発生時に即応できる体制の構築と維持に必要な知識

災害現場での意思決定能力

  • 被災地の状況を把握し、ドローンの最適な活用方法を判断するスキル
  • 支援ニーズに基づいたドローン運用を調整するスキル

現場でのリーダーシップと統括スキル

  • 災害現場で調整役・統括役として、関係者をリードするために必要なスキル
  • チーム全体の活動を効果的に監督し、作業の効率化を図るスキル
  • 各団体との協力体制を構築し、関係者間の円滑なコミュニケーションを促進するための知識

災害支援活動における安全管理能力

  • ドローン運用時の安全対策の知識と実践スキル
  • 現場作業中の事故やトラブルを未然に防ぐためのリスク管理能力

ドローン防災スペシャリスト教育講座 概要

受講形式座学(eラーニング対応)
受講期間約3~4時間(目安)
受講料・修了証JUIDA個人会員:3万8,500円(税込)
JUIDA非会員:4万4,000円(税込)
※受講修了後、JUIDAから修了証が発行される。有効期間は3年間。有効期間中は、eラーニング教材で復習が可能。