2024年7月23日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)は、「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)」の一環として「高高度無人機による海洋状況把握技術の開発・実証」に着手することを発表した。

 同事業では世界に先駆けて、成層圏の特定位置に長時間継続的に停留して通信を提供する高高度プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)をセンシングプラットフォームとして活用するために必要な技術の確立を目指す。

 具体的には、リモートセンシング技術の開発やセンサーから得られた情報共有のためのデータプラットフォーム技術、HAPSの運航に係る技術の研究開発を行う。さらに、高高度無人機の実用化に向けては供給電力に限界があることから、高緯度での長期航行を実現する動力源確保のためのフィジビリティスタディを行う。

 これにより、海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)の能力を強化し、海洋の安全や海洋産業の成長を目指す。

実施内容・採択テーマ

〔1〕海洋状況把握技術に関する研究開発

 HAPSに搭載するため、従来大型の無人機にしか搭載できなかった光学/赤外線(EO/IR:Electro-Optical/Infrared)センサー、合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)を軽量化、省電力化し、実際の飛行軌道を想定した実証を行う。さらに、HAPSへ搭載する複数センサーから収集したデータを複合的に解析するシステムの開発・実証や、MDAで利用するHAPSの飛行経路や飛行計画など通信ミッションとは異なる特異なケースでの運用に適した運行管理と気象情報の提供を可能にするシステムの開発・実証を実施する。

事業名 :経済安全保障重要技術育成プログラム/高高度無人機による海洋状況把握技術の開発実証/高高度無人機による海洋状況把握技術の研究開発
予算 :60億円
期間 :2024年度~2028年度(予定)
実施予定先 :Space Compass、新明和工業、三菱総合研究所

【実施概要】

「高高度無人機による海洋状況把握技術の研究開発」概要・事業イメージ


〔2〕高高度無人機の長期航行技術に関する研究開発

 HAPSの日本周辺での長期航行を実現するための動力要素技術の開発を目的に、高緯度で高効率発電が可能な太陽光パネルや高密度エネルギー蓄電池の開発・実証を視野に入れ、成層圏での飛行実証段階にある機体の技術動向分析を行う。そして、HAPSに搭載し長期航行を実現する太陽光パネルや蓄電池の開発要素、達成目標の抽出を行うフィジビリティスタディを実施する。

事業名 :経済安全保障重要技術育成プログラム/高高度無人機による海洋状況把握技術の開発・実証/HAPS用高エネルギー密度電池パックおよび高効率発電が可能な太陽電池の研究開発
予算 :2億円
期間 :2024年度(予定)
実施予定先 :ソフトバンク

【実施概要】

「HAPS用高エネルギー密度電池パックおよび高効率発電が可能な太陽電池の研究開発」概要・事業イメージ