2024年3月25日、日本精工(以下、NSK)は、eVTOL(大型ドローン)向けガスタービン発電機用軸受を開発し、市場に投入したことを発表した。2030年までに売上10億円を目指すとしている。

 同製品は、2023年度 地域復興実用化開発等促進事業の「80kWハイブリッド動力システム搭載大型ドローン(ガスタービン発電機を搭載した高ペイロード緊急物資輸送用ドローン)」のガスタービン発電機に採用され、2月21日に福島県に納入された。

ガスタービン発電機を搭載した高ペイロード緊急物資輸送用ドローン(提供:エアロディベロップジャパン)
ガスタービン発電機の軸受配置(提供:エアロディベロップジャパン)

 eVTOL(電動垂直離着陸機)の推進機構は完全電動式が主流であるが、航続距離延長や運搬能力の向上などのニーズを受けて、高出力・小型軽量なハイブリッド電動式の需要の高まりが予想される。特にガスタービン発電機は、バイオ燃料や水素など多種燃料が使用でき、カーボンニュートラルの観点からも有力視されている。

 ガスタービン発電機に搭載される軸受は、軽量化と高速回転性能が求められる。そのため、最小限の潤滑油で、高速回転性能(dmn250万以上)を確保しなくてはならない。

製品の特徴

 潤滑油の新しい潤滑機構を開発することで、軸受で必要な潤滑油量と動力損失を削減し、高速回転性能(dmn250万以上)を確保した。

1. 潤滑油量の削減
 従来の潤滑機構であるジェット潤滑に対して潤滑油量を1/4に削減することで、軸受潤滑油の給排油ポンプ、給油タンクを軽量化。

2. 動力損失を削減
 従来の潤滑機構であるジェット潤滑に対して動力損失を2/3に削減。

3. 高速回転性能(dmn250万以上)の確保

製品の技術

 高速軸受で一般的な潤滑機構であるジェット潤滑の課題(潤滑油量が多量・動力損失が大きい)を、より高速回転領域で使用されるアンダーレース潤滑の給油方法を取り入れることで解消し、潤滑油量と動力損失を削減した。

既存の潤滑機構の課題

 ジェット潤滑は、給油機構に互換性が高い部品(間座)を使用しており、汎用性とコストの面で優れているが、軸受外部から高圧・多量の油を強制的に給油するため潤滑油量が多量で動力損失が大きい、という課題があった。

ジェット潤滑

 アンダーレース潤滑は、シャフト・軸受内輪に専用設計された流路から軸受内部へダイレクトに給油する方式で、汎用性が低く高コストになるが、必要量(少量)の油を遠心力で給油するため、潤滑油量が少なく動力損失が小さいという利点がある。

アンダーレース潤滑

新しい潤滑機構

 新しい潤滑機構では軸受内部へダイレクトに給油できる間座形状に改良することで、必要量(少量)の油を遠心力で給油。結果として、高い汎用性と低コストは維持しながら潤滑油量・動力損失の低減を実現した。