2023年12月7日、大林組とKDDIスマートドローンは、衛星通信Starlinkと自動充電ポート付きドローンにより現場監理業務を削減するシステムを開発し、実証実験を行ったことを発表した。

 この実証実験は、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に採択され実施するもの。自動充電ポート付きドローンが目視外で自律飛行し、建設現場および既存インフラの巡視、点検、計測、異常検知を自動で行うドローンシステムの開発を行い、現場監理業務を80%削減できることを確認した。この結果、2023年6月に国土交通省より、技術の導入効果や社会実装の実現性について最高評価であるA評価を受けた。

 国内の就労人口の減少を受けて、政府は2022年6月に「アナログ規制」の見直しを発表。インフラ点検における目視規制が廃止され、建築申請、現場巡視が定点カメラで代替可能となることから、2社は現場監理や施設管理における複数の業務を自律的に行うドローンシステムを、2022年11月に共同開発した。

 2023年2月の実証実験では、三重県伊賀市の川上ダムに自動充電ポート付きドローンを設置し、同システムの検証を行った。

設置した自動充電ポート付きドローン

 KDDIが提供するStarlinkをバックホール回線(※1)としたauエリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」により通信環境を整備し、自動充電ポート付きドローンによる定期的な監視・測量フライトを実施。また、地震発生時を想定した自動充電ポート付きドローンによるダムおよび貯水池の状況把握、撮影した写真を基にした3次元点群モデルの生成、大林組が活用するCPS(Cyber Physical System)(※2)での管理や、撮影した画像のAI画像判定による建設現場の進捗状況判定を行った。

 その結果、建設現場および既存インフラの巡視、点検、計測、異常検知を自動で行うことで、建設現場監理者の日常的な管理業務を大幅に削減。従来は345分かかる業務が60分になり、業務時間を約80%短縮することができた。

 今後両社は全国の大規模建設現場への導入を目指し、システムの検証を進めるほか、複数のドローンを同時に管理する検証を実施するとしている。

※1 バックホール回線:街などのau基地局と、基幹通信網との接続点である最寄りの拠点施設とをつなぐ中継回線。
※2 CPS(Cyber Physical System):現実世界(フィジカル)で取得したセンサー情報をネットワークを介して収集し、コンピュータ上に構築した仮想空間(サイバー空間)で処理・分析・解析・知識化する技術。また、そこから得た情報・計算値・推論値を現実世界へ反映させるシステム。

CPSの画面