2023年10月4日、SORA Technology(以下、ソラテクノロジー)は、村田製作所(以下、ムラタ)が進める共創プロジェクトの支援を受けて、飛行機研究所と共同開発をしているソーラープレーンの長時間飛行を実現したことを発表した。長時間飛行ができる利点を生かし、GX(グリーントランスフォーメーション)事業の展開も進めるとしている。

ムラタのデバイスをソーラープレーンに搭載

 ソラテクノロジーと飛行機研究所が共同開発を進めていたソーラープレーンは、長時間飛行するためには、飛行制御や電力制御、異常を検知することが課題であった。その課題を克服するには、フライトコントローラや電源管理システムなどのデバイスの高性能化が求められる。

 ムラタが製造しているデバイスであれば長時間飛行が可能になるというアイデアを、ムラタが主催する共創プロジェクト「KUMIHIMO Tech Camp with Murata」に応募し、2023年3月に最優秀賞に選出。その後、ムラタから提供を受けた各種デバイスをソーラープレーンに搭載した試作機を作り、飛行試験を実施した。

7時間7分の長時間飛行を実現

 2023年8月に栃木県宇都宮市で行った飛行試験では、ソーラープレーンが飛行するために必要な消費エネルギーを太陽光から得られるエネルギーが超えるように設計した機体が、7時間7分の長時間飛行を実現した。

 ソーラープレーンに搭載したバッテリーの電圧は、太陽が出ている時間帯ではほとんど変化がなかった。これは、飛ぶために消費されるエネルギーを超えるエネルギーがソーラー発電によって供給できたことを意味している。

 今後、ムラタ製の高性能デバイスを使うことでエネルギー容量を向上させつつ、飛行高度や位置を従来よりも高精度に計測できるように開発を進めるとしている。

マラリア媒介蚊の幼虫駆除の効率化、GX・農業分野への活用

 長時間飛行ができる無人ソーラープレーンにより、ソラテクノロジーが取り組むマラリア媒介蚊の幼虫(ボウフラ)の駆除がより効率的になり、低コスト化が可能になる。また、その他の用途として、GXや農業分野での活用が見込まれる。

GX分野 :2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを実現する手段の1つである二酸化炭素の排出権取引。森林の二酸化炭素吸収量を算出するための測定に使用する。

農業分野 :人手不足が深刻化する農業分野で、一度に長時間飛行できるメリットを生かし、田畑をより広い範囲で測量することで農作業の効率化に寄与する。