テラドローンは、インドネシアおよびマレーシアにおける農業ドローン市場に本格参入するため、2023年9月21日、子会社Terra Drone Indonesiaを通じてAvirtech(アヴィールテック)社の事業を買収すると発表した。さらに、マレーシアで事業展開するための新法人「Terra Drone Agri」を設立。グローバルで持続可能な農業の実現を目指すとしている。

労働力が不足するパーム油産業

 2030年には農業用のドローンの世界市場は最大142億9,020万ドル(約2兆900億円)に成長すると予想されていることから(※1)、農業ドローンは精密な作物管理や高効率な生産手法を実現する上で、空のインフラ構築の重要な分野となると同社は見込んでいる。

 インドネシアとマレーシアは、食品、化粧品などさまざまな商品に幅広く使われるパーム油の主要な生産地として知られており、世界における生産の約8割を占める(※2)。しかし、森林伐採や生態系への影響、温室効果ガスの排出といった環境への影響が懸念されている。また労働環境が厳しい上、労働力が不足しているなど、深刻な問題を抱えているという。

※1 グローバルインフォメーション調べ「農業用ドローンの世界市場- 2023-2030
※2 米国農務省(USDA) Palm Oil 2023World Production

今後インドネシアとマレーシアでドローン農薬散布事業を拡大

 今回、テラドローンが事業譲受したAvirtechは、インドネシアとマレーシアで2017年よりドローンを用いたパーム油農園の農薬散布事業を展開。高精度の農薬散布を可能にする技術を有している。これまでに累計20万ヘクタール以上の面積で、1日あたり最大4,000回の飛行を実施。最大30%のコスト削減を実現し、150機以上のドローン普及の実績を持つ。パーム油産業の労働力不足の解消や作業員の安全確保、生産性の向上に寄与しており、今後もこうした課題解消やサステナビリティに配慮した生産支援が期待されている。

 今回、テラドローンはAvirtechから事業を譲受することで、インドネシアとマレーシアで農業事業に参入し、持続的な成長とグローバルでの新しい価値提供を目指す。具体的な事業遂行については、インドネシアではグループ会社のTerra Drone Indonesiaが、マレーシアでは新たに設立したTerra Drone Agriが展開する。

 テラドローンは今後、インドネシアとマレーシアにおけるドローンを活用した農薬散布事業の拡大を最優先に実施するとしている。特に、効率的なパーム油の栽培支援に注力し、持続可能な農業の実現を目指す。新事業を展開する中で知見を蓄積し、日本を含む海外での展開も検討する。

各社コメント

テラドローン 代表取締役社長 徳重徹 氏

 私たちが日々目の当たりにしているのは、グローバルでドローン技術の活用が日々増している現実です。特に農業領域では可能性が計り知れません。今回の農業ドローン事業参入は、"空から、世界を進化させる"というミッションを実現するための重要な一歩です。Avirtechの事業取得やマレーシアでの新会社設立を通じ、農業の現場でのドローン活用の拡大と技術革新を進めていく所存です。

Avirtech COO ウィルソン・オング(Wilson Ong)氏

 Terra Droneへの事業譲渡を発表できることを嬉しく思っています。この大きな戦略的なステップにより、農業用ドローンの可能性が新たな次元に広がります。そして、私たちがこれまで続けてきた技術革新への取り組みも更に強化されることを確信しています。