2023年8月29日、ファンリードは、内閣府主催の「2023年度みちびきを利用した実証事業」において、ベトナムでの電力不足問題への取り組みとして高精度測位補強サービス「MADOCA-PPP」を活用したドローンによる送電線点検作業効率化ソリューションの性能評価実証を提案し、採択されたことを発表した。

 MADOCA-PPPは、アジア・オセアニア地域でも利用可能な高精度な測位補強サービスを提供するために、国内外のGNSS監視局網の観測データに基づき測位衛星に起因する誤差を計算し、日本の衛星測位システムみちびきのL6信号により補正データを送信している。

 同プロジェクトは、2023年7月から2024年2月に国内ならびにベトナムハノイ市で実施予定。同社は、2019年度みちびきを利用した実証実験に続いて2回目の採択となる。

ベトナムの電力不足問題

 東南アジアの中でも今後の経済成長が特に期待されているベトナムでは、経済発展に伴う電力不足が顕在化し、海外投資の呼び込みにあたっての重大なリスクとなっている。この課題に対して国営ベトナム電力公社(以下、EVN)は、(1)送電網の拡充とともに、(2)既存の送電線の老朽化や不備による電力損失の改善に取り組んでいる。(2)において重要となるのが、送電線点検手法の改善である。EVNは従来の人による点検作業からドローンを活用した送電網の点検ソリューションに置き換えることで、正確なデータ化・効率化を図ろうとしており、今後活用するドローンとしてベトナム国産ドローンの採用を検討している。

実証事業の概要

実証事業名
MADOCA搭載ドローンのインフラ点検への活用に向けた性能評価実証

実証事業の概要
 ベトナムにおける電力不足の課題解決に向けて、ファンリードが実績のあるベトナム国産ドローンメーカーMAJと協働して、MADOCA-PPPの高精度測位機能を付加したドローンベースのインフラ点検ソリューションビジネスの事業化を目指す実証事業。

 送電網の点検においては、送電線の損傷や溶損、素線切れなどの異常箇所の位置推定を行う必要がある。電網のようなインフラ構造物は3次元的な広がりを持っており、送電線の異常部位の正確な位置推定は複雑である。ドローンによる観測位置を高精度に測位できるMADOCA-PPPとスマート農業分野で開発したVisual SLAM技術を組み合わせることで、送電線の異常部位を推定する。

ファンリードが提案する送電線点検ソリューション

 ファンリードはこれまで、マレーシアの農業・環境分野において、スマート農業やマングローブ保全などを推進してきた。今後、東南アジアにおける事業拡大を目指し、今回の実証事業を契機にベトナムでのインフラ点検ソリューションに取り組むとしている。