2023年9月13日、日本電気通信システム(以下、NEC通信システム)は、­竹中工務店、­センシンロボティクスと共に、3次元屋内外位置測位(MBS、※1)の技術を活用したリアルタイム位置測位の技術実証を2023年8月に実施し、自律航行型ドローンの制御に向けた屋内外でシームレスな位置測位が実現可能であることを確認したと発表した。

※1 Metropolitan Beacon System。GPSと同じ原理で、地上に設置した異なる配置の基地局からの信号を4つ以上同時に受信することにより、それぞれの基地局と測位端末の距離を計算し、緯度・経度および高さを計算する。(MetComホームページより)

ドローンのリアルタイム位置測位を、MBS技術を活用して検証

 近年建設業界では、入職者の減少や働き方改革などにより、労働生産性の向上や労働時間の改善などが強く求められており、より高い生産技術の追求が進められている。そのため建設現場においてロボットによる定期巡回や物資運搬による作業効率化のニーズが高まっており、特にドローンは路面状況の影響を受けず、建設現場の日々の環境変化に強いため注目されている。

 自律制御を行うためにはまず機体の位置の把握が重要となるため、これまで建設業界ではさまざまな取り組みを行ってきた。例えば、GNSS/RTKなどの衛星測位の技術は、屋外でドローンの位置を詳細に把握するために、すでに数多く利用されている。一方、屋内では衛星測位が利用できないため、SLAM/VSLAMなどのレーダーや映像を分析し地図のマッピングと自己位置推定を行う方法を利用することが一般的である。しかしこれらの方式は、特徴点の少ない壁面では測位に失敗する場合や、似たような構造をしているフロアの区別ができないなどの弱点がある。

 今回、屋内外を問わずシームレスに測位可能であるMBSの技術を元に、こうした屋内外を行き交うドローンの自律制御のためのリアルタイム位置測位技術が実現可能であるかを検証した。

自律ドローンによる巡回イメージ

MBSトラッカー、RTK、レーザー距離計のデータを同時に取得して比較分析

 今回の実証では、まず3次元屋内外位置測位を行うMBSサービスを元に数十ミリ秒ごとのリアルタイム測位を行う独自方式の位置トラッカー(MBSトラッカー)を試作して、ドローンに搭載した。MBSサービスが建設現場において機能することは2022年10月に実証済みであるため、今回は屋外において係留状態のドローンを手動で航行させ、ドローンでRTKの位置測位をすると同時に真下の地面に向けてレーザー測距を行い、MBSトラッカー、RTK、レーザー距離計のデータを同時に取得して比較分析を行った。

 また、MBSサービスの利用やデータの出力先としてクラウドとの通信を行うために、MBSトラッカーと地上との間は、免許が不要なプライベートLTE方式であるsXGP11を用いて高信頼なデータ回線を構築した。

実証構成概要
実証の様子

MBSサービスを元にしたリアルタイム測位は実現可能

 今回の実証により、MBSサービスを元にしたリアルタイム測位が実現可能であることや、sXGPにより高品質なデータ回線が確保できることを確認。また、高さの測位に気圧を利用するMBSに対しドローンのプロペラによる気圧の変動の影響についても確認することができ、測位誤差の修正に向けた知見を得たという。

 このリアルタイム位置測位の技術をドローンの自律制御と連携させ、屋内外をシームレスに運航させる技術を開発することで、今後の建築現場での労働生産性の向上や、物流運搬における改革が期待される。