2023年7月4日、KDDI、KDDI総合研究所、野村不動産ホールディングスは、2023年3月17日から3月31日まで、大規模マンションの住民を対象にロボットを用いた商品配送の受容性の確認と、技術的な課題を抽出するフェーズ2の実証実験を実施したことを発表した。

 実証実験では、プラウドシティ日吉の居住者から実験用ECサイトを通じて約100件の注文を受け、ロボットが同敷地内の商業施設から各住戸の玄関前まで商品を配送した。今後、エレベーターとの自動連携や、雨風対応が可能なロボットの導入を検討していく。

実証実験の様子
実証実験に使用したロボット

 2030年の日本においては、サービス業を中心に労働力が不足すると推定されている(※1)。特に配送業は2024年問題に代表されるように、ドライバーの不足が見込まれる一方、日常的に買い物に費やせる時間の少ない共働き世帯や外出が困難な高齢者のみの世帯が増加し、今後ますます配送の需要が高まることが想定されている。

 3社は、2022年2月から「ロボットを用いた商品配送に係る実証実験」を3つのフェーズで進めている。フェーズ1では、2022年2月にスタッフのみでの配送サービスを確認した。今回のフェーズ2ではスタッフとロボットによる配送サービスを実施し、今後フェーズ3では、ロボット単独による配送サービスを検討していくとしている。

※1 パーソル総合研究所 労働市場の未来推計2030 https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/spe/roudou2030/

実証実験の概要

 実証実験を通じて、ロボットを活用した商品配送が、労働力不足の解決や住宅居住者への新たな価値提供に貢献するかということについて評価した。また、マンション内のエレベーターなどを利用して、ロボットを活用した商品配送における技術的な課題の抽出を行った。

 実証実験は、2023年3月17日~31日、プラウドシティ日吉レジデンス I・II、SOCOLA日吉の敷地内において、プラウドシティ日吉レジデンス I・II 居住者を対象として実施した。対象者がSOCOLA日吉の店舗にて取り扱う商品(約300品目)を注文用ECサイトから購入し、ロボットが各住戸の玄関前まで商品を配送した。配送料は無料。なお、安全性確保のためロボットには専属スタッフが帯同した。注文集中時などロボットが全台出払っている場合はスタッフが配送を行った。

実証実験の結果

ロボット配送に対する住民の受容性

 実証実験参加者の86%は、初めて商品配送サービスを利用した。同実証実験を通じ、ロボットに対する好意的な意見やニーズがあったことから、ロボットを用いた商品配送に受容性があることがわかった。将来、人に代わりロボットが商品配送を行うことで、労働力不足の課題解決に寄与することが期待できる。

<参加者の声>

「共働きで子供が2人いる家庭では、大変便利だった。ごはんを作る余裕やおやつがないときに利用した」
「ロボットの瞬きが可愛かった」
「ロボットを見せることができ、子どもたちに良い経験をさせることができた」
「注文したが雨が降っていてロボットに来てもらえず、スタッフによる配送だったのが残念」

ロボット配送の所要時間

 エレベーターの待ち時間などを含めたマンション内の商品配送にかかる時間は1注文あたり約30分(ロボット走行速度 0.7~1m/s)という結果になった。複数の注文を1度の配送で処理するなど、配送の効率化が課題となった。

ロボット配送のピークタイム

 注文数は9~10時台、18~19時台が多い結果となった。遅めの朝食や夕食の時間の利用が多かったと想定される。注文の混雑時間と閑散時間を考慮したロボットの配備が課題となった。

注文世帯数プラウドシティ日吉レジデンスI・II居住者のうち 72世帯
総注文数・注文実績総注文数102件
2L飲料などの重い商品や、不足した生活必需品、
忙しい朝食夜食時の弁当・ホットスナックなどを配送

 今後、注文の混雑時間と閑散時間を考慮したロボット配備計画の検討を進めるとともに、複数注文の1度での配送処理、エレベーターとの自動連携、風雨への対応などが可能なロボットの導入を検討するとしている。