2023年3月16日、エアロセンスは、2月上旬、VTOL(垂直離着陸型固定翼)型ドローン「エアロボウイング」を活用し、熊本県八代市泉町の久連子川流域で、砂防堰堤や山腹崩壊等の状況を確認するため飛行試験を実施したことを発表した。

離着陸所の久連子古代の里から飛行するドローン

 巡視作業員が実際に行う点検の場合1~2日かかる作業を、VTOL型ドローンでは6基の砂防堰堤(約13km)を13分で飛行し、大幅に時間を短縮した。また、豪雨や地震等により砂防施設までのアクセスが困難な場合において、巡視作業員の安全性向上にも期待できることを確認した。

 久連子川流域を含む川辺川の砂防施設を管轄する九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所では、ドローンの活用により砂防施設の点検の効率化や災害時危険箇所の巡視作業の効率化、巡視作業員の安全向上を目的に「川辺川流域無人航空機渓流点検方法検討業務」において、2022年度よりレベル3(無人地帯における目視外飛行)の飛行試験・検証を実施している。その一環として、連続的に砂防施設が配置され、2022年の台風14号により道路も数か所で被災し、砂防施設までのアクセスが困難な久連子川流域を試験フィールドとして、エアロセンスが飛行試験・検証の運航を行った。

飛行試験の概要

 2023年2月8日、国土交通省 九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所管轄の砂防施設のある久連子流域において、エアロボウイングを飛行させ、砂防堰堤の点検を実施した。

 離着陸地点の久連子古代の里を離陸後北西に飛行し、道路の崩落状態を確認。その後、着陸せず久連子川上流に連続的に配置された砂防堰堤上空を飛行し撮影した(事前に設定したフライトプランに従って自動飛行)。これにより砂防堰堤や山腹崩壊等の状況とあわせて、道路の被災状況を確認した。飛行距離は約13km、時間は13分。

飛行ルートと点検・撮影エリア(オルソ画像部分)
飛行中に撮影した砂防堰堤の画像(左)と拡大画像(右)
飛行中に撮影した陥落した道路の画像(左)と拡大画像(右)

 今回の飛行試験について、九州地方整備局 川辺川ダム砂防事務所 工務第二課の須田木係長は、次のように述べている。

 「2022年の台風14号発生後、久連子川付近の道路の被害は想像以上で、人が立ち入って点検を行うことは危険がともなうため困難な状態でした。今回、VTOL型のドローンを活用した飛行試験では、想像以上に飛行速度が速く、短時間で状況把握が済んだことは効率化や安全確保の意味でも非常に有効だと認識しました。災害発生後、現地の映像が直接事務所で確認できるようになれば迅速な復旧計画や作業などの対応が可能になるので、今後ドローンでの点検を積極的に活用していきたいと考えています」

 エアロセンスは、2022年12月の改正航空法による有人地帯での目視外飛行(レベル4)の解禁に伴い、機体性能の向上と販促の強化を図り社会に普及させることで、ドローンの社会実装の可能性を拡大させるとしている。