2023年3月10日、NTTデータ、応用地質、東京海上日動火災保険、日本電信電話(NTT)、東日本電信電話(NTT東日本)、三菱電機インフォメーションシステムズの6社は、技術実証を通じて、ドローンとスマートフォンアプリを活用し家屋被害状況を効率的に収集するサービス(以下、家屋被害調査サポートサービス)の開発に取り組むことを発表した。

 6社は防災コンソーシアムCOREの分科会においてデジタル技術を活用した生活再建支援に取り組んでおり、大規模水災時でも迅速かつスムーズに建物情報・被害状況・浸水高等を調査可能な仕組みを構築し、自治体の罹災証明書発行や、被災した顧客の生活再建を支援するとしている。

 2023年度中にサポートサービスの実用化を目指し、茨城県と連携して実務における課題整理や査定技術の精度を高めたうえで、2024年度に社会実装として各自治体への展開を検討していく。

背景

 近年、日本各地では甚大な被害をもたらす台風や豪雨などの自然災害が頻発している。こうした中、6社は防災コンソーシアムCOREの分科会として、デジタル技術を活用した生活再建までの期間短縮・被災者の負担軽減をテーマにサービス開発に取り組んできた。

 自然災害発生時には、損害保険会社による被害調査、自治体における各種調査や申請支援などの業務が発生するが、自然災害の激甚化や広域化、人手不足等により、被災者への初動対応・早期復旧に関わる対応が逼迫するケースがでてきている。特に、自治体の罹災証明書の発行業務については、限られた人員の中で被災状況の調査から証明書の発行まで行う必要があり、時間を要することから、被災者の生活再建に遅れが生じているという課題もある。

現状の被害認定に係るフローと必要な期間

家屋被害調査サポートサービス

 水災時における自治体業務の効率化・省人化を支援し、罹災証明書の発行を支援していくため、ドローンとスマートフォンアプリを活用した水災時の家屋の被害調査サポートサービスを開発する。

ドローンによる調査

対象エリア
 山間部や二次被害が想定され人手による調査が困難・危険なエリア、大規模災害時等の広域な被害エリア。

導入の効果
 ドローンによる調査を導入することで、山間部や人が簡単に踏み込めないエリアに対しての家屋被害の効率的な調査を実現する。従来こうしたエリアでは、罹災証明書の発行において時間を要していた事から、今後は罹災証明書の発行までの時間短縮が期待できる。

把握・提供予定のデータ
 ドローンで撮影した浸水深の測定結果、家屋被害状況の3D写真。

スマートフォンアプリによる調査

対象エリア
 密集した市街地や局地的な早期計測が必要なエリア。

導入の効果
 スマートフォンアプリによる調査を導入することで、密集した市街地や局地的な早期計測が必要なエリアに対しての家屋被害の効率的な調査を実現する。従来のアナログな測定だけではなく、デジタルを用いた新たな家屋被害調査を実現することで、罹災証明書の発行までの時間短縮が期待できる。

把握・提供予定のデータ
 スマートフォンアプリ(LiDARカメラ)で撮影した浸水深の測定結果、家屋被害状況の写真。

技術実証について

 家屋被害調査サポートサービスの設計にあたり、2022年12月に6社で技術実証を行い、技術面の有効性を確認した。

実証実施日
2022年12月19日(月)、20日(火)

実施場所
福島ロボットテストフィールド

検証内容
 実際に浸水跡のついた建物を対象とし、(1)〜(3)の手法で浸水深の計測を実施した。

(1)従来の職員によるポールやメジャー等を使った目視判定
(2)ドローンによる計測
(3)スマホアプリを用いた計測

 それぞれの計測での誤差を確認し、ドローンやスマホアプリによって浸水跡が判定でき、正しく効率的に浸水深を計測できるか検証を行った。

計測対象となる浸水跡のイメージ

ドローンを用いた計測

 ドローンから家屋2件を写真撮影したうえで3次元モデルを作成し、浸水深を計測した。なお精度、撮影~解析処理にかかる時間の違いから3パターンについて検証を行った。

 浸水深は3パターンとも正解値に対し誤差1cm以内に収まっており、実運用への適用可能性が高いと検証できた。また今回は2物件のみを対象としたが、今後広域を対象とする場合には1件当たりの時間は大きく低減できると考えられる。特に無人航行が一般化された場合、現状の課題である要員不足の解消につながるため、計画~調査までの時間の大幅な効率化の可能性が示された。

スマホアプリを用いた計測

 スマートフォンに掲載されているLiDARカメラを用いて浸水深の測定を行い、人手での測定との比較検証を行った。

スマホアプリでの測定風景・イメージ

 同検証において(1)従来の職員による手計測に対し(3)スマホアプリを用いた計測ではより短い時間で計測が可能となった。また、精度についても正解値に対し誤差1cm以内に収まっており実運用への適用可能性が高いと検証できた。また、従来は計測役と撮影役の2名以上が必要であったが、同アプリを活用することで1人での調査を可能にし、要員不足軽減への貢献が期待される。