2023年2月28日、DJI JAPANと愛知県豊橋市、中京テレビ放送は、豊橋市役所で「ドローンの活用促進に関する協定」の締結式を実施した。今回、DJIと豊橋市、中京テレビが連携し、ドローンのさらなる活用の促進に努めることを目的としている。締結式にはDJI JAPANの呉韜代表取締役と豊橋市の浅井由崇市長、中京テレビ放送ビジネスプロデュース局の村井清隆局長が出席した。

サインした協定書を手にするDJI JAPANの呉韜代表取締役(右)と豊橋市の浅井由崇市長(中央)、中京テレビ放送ビジネスプロデュース局の村井清隆局長(左)

 豊橋市は、災害時における被災情報の速やかな収集を目的に、2017年にドローン飛行隊「RED GOBLINS」を結成しており、同市の防災危機管理課が運営している。同隊ではDJIの機体を使用しており、豊橋市消防本部と連携した水難事故の救助や防災訓練のほか、土砂災害の現場計測などの実績がある。また、市内にある「とよはし産業人材育成センター」にはドローンの飛行が可能な幅約65m、奥行き約18m、高さ約14mの実習室があり、国土交通省によるドローンを運用するための国家資格の指定試験機関となった日本海事協会の実施する「無人航空機操縦士試験」の実地試験会場に選定されているなど、ドローンの運用に注力している。

 一方で中京テレビは、ドローンを操縦する人材の育成に取り組んでおり、1月下旬にドローンパイロットの育成スクール「そらメディア」をローンチした。現在は民間資格や国家資格などに対応するカリキュラムを提供しており、今後は同社の強みを生かした撮影用ドローンのカリキュラムの提供も予定する。ドローンユーザーの多様なニーズに応える講習で、ドローンの裾野を広げる一翼を担うとともに、さまざまな社会課題の解決につなげることを目指している。

 同協定は、豊橋市とDJI JAPAN、中京テレビが相互に連携を図り、災害対応などにおける無人航空機のさらなる活用を促進することなどにより、資機材の有効性を広く周知するとともに、災害対応力の向上や活力ある地域社会の形成と交流人口および雇用の増加により、豊橋市の発展に寄与することを目的としている。
 協定では、ドローンに関する3者の連携事項として以下が設定された。

(1)機体の提供に関すること。
(2)ドローンの活用促進に向けた技術支援に関すること。
(3)防災分野における訓練の実施および機体の検証に関すること。
(4)ドローンの安全かつ効果的な運用に係る人材育成に関すること。
(5)とよはし産業人材育成センターの利活用促進に関すること。
(6)ドローンが活躍する社会を目指した事業の実施および周知に関すること。
(7)その他前条の目的を達成するために必要な事項に関すること。

 協定の事項を活用した具体的な活動等については今後、詳細を詰めていくこととなる。

ドローンの防災分野の活用が評価されている豊橋市

 締結式後には、呉氏と浅井市長の対談が行われ、同協定を締結したいきさつと主な取り組み、今後の見通しが明かされた。

ドローン活用のための協定を結ぶことになったいきさつや狙いについて話す浅井市長(右)と呉代表(左)

 浅井市長からは、災害で被災した市民に対して罹災証明書を発行するまでの期間を短縮するためにドローンを活用する方針や、令和4年(2022年)9月の台風15号の影響で市内の渥美半島海岸に多くの流木が流れ着いた際に、15kmほどにわたる海岸の現状を調査するためにドローンを活用して数日かかる調査を1日で行えた事例などが紹介された。

 呉代表からは、防災分野でドローンを使用するために必要となる防水機能や耐強風性能の強化を視野に入れた技術開発に注力してきたことと、ライトやスピーカー、サーモセンサーなど様々な装備を追加することで災害時の市民の避難誘導などに活用できるという見通しが示された。また、豊橋市の防災分野でのドローンの使用事例が世界的に見ても進んでいるとして、これまで以上にドローンを使用するための活用法やアイデアのアドバイスを希望したいという意向も明かされた。

 浅井市長は対談でドローンを取り巻く法規制の変化や資格の新設などに触れ、変化に対してしっかりと対応してドローンの活用を進めていくことを表明し、加えて様々な分野でドローンを活用するための人材を育成していくことも強調した。それらを実現し、豊橋市を“ドローンの聖地”と呼ばれるようにしたいと語った。

対談後にDJI社の最新ドローンを手にして記念撮影に応じる浅井市長(右)と呉代表(左)