2023年2月3日、KDDIスマートドローンは、国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所、八千代エンジニヤリング、プロドローンと合同で、荒川下流河川内において、全国初(※1)の河川上空利用ルールの策定に向けたフードデリバリーおよび河川巡視の実飛行・運航管理の実証実験を、2023年1月27日に実施したことを発表した。

 2022年12月に施行された改正航空法により、有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が可能となったことを受け、都市部におけるドローンの利活用に期待が高まっている。ドローンは生産年齢人口の減少に伴う労働力の代替、災害時における状況把握や物資配送など、さまざまな社会課題を解決するテクノロジーのひとつとして社会実装に向けた取り組みが進められている。

 荒川下流河川事務所は、国土交通省の取り組み「河川上空を活用したドローン物流の更なる活性化に向けた実証実験」に参加しており、同実証は荒川下流(都市部)における「荒川下流河川上空利用ルール(案)」の策定に向けて実施したものとなる。

※1 荒川下流河川事務所調べ。2023年2月2日現在。

実証について

 将来の荒川下流(都心部)におけるフードデリバリーや河川巡視のドローン運航を想定し、荒川上空で物流用と河川巡視用のドローンを同時に自律飛行させ、河川上空利用ルールを策定する上での実用性・有効性を検証した。

 KDDIスマートドローンが開発したドローン専用通信モジュール「Corewing 01」を各機体に搭載し、「スマートドローンツールズ」(※2)の運航管理システムを利用することで、モバイル通信によるドローンの自律飛行を可能とし、事務所内から遠隔制御を実施した。

※2 ドローンの遠隔自律飛行に必要な基本ツール(運航管理システム、クラウド、モバイル通信)をまとめた「4G LTEパッケージ」に、利用者の利用シーンに合ったオプションを組み合わせて利用できるサービス。

実施内容

1. 物流・河川巡視用途での実用性・有効性の検証

① フードデリバリー
 都市農業交流館内のマルシェの飲食物等を荒川岩淵関緑地バーベキュー場に自律飛行で配送した。使用機体はプロドローン製「PD6B-Type3」。

対岸へ飲食物を運ぶ「PD6B-Type3」

② 河川巡視
 岩淵水門・低水護岸の河川巡視を想定し、ドローンの自律飛行により巡視に必要な画像データの取得を行った。各種データの送受信にもモバイル通信を使用した。使用機体はDJI製「Matrice 300 RTK」。

荒川下流河川事務所屋上から離陸し河川巡視を行う「Matrice 300 RTK」

2. 遠隔オペレーションの実用性・有効性の検証

 荒川下流河川事務所の災害対策室をオペレーションルームに見立て、運航管理システムを通して、機体の飛行位置、状態、電波状況、GPS精度、気象情報や、機体に搭載されているカメラからのリアルタイム映像を確認しながら、遠隔操作によるドローンの運航を行った。

運航管理システムの画面。機体の飛行位置や河川巡視に必要な情報などを、機体搭載カメラからのリアルタイム映像で確認しながら遠隔操作によるドローンの運航を実施した。

使用機体

① フードデリバリー
・プロドローン製「PD6B-Type3」

 最大ペイロード30kgの大型機で、高い安定性と可搬性を両立させた産業用プラットフォーム。レーザー測量機や物資輸送機として使用されている現行のPD6B-Type2をさらに進化させた。目視外自律飛行に対応し、今後のレベル3(無人地帯における補助者なし目視外飛行)、レベル4前提社会に対応する機体構成となっている。
  今回の実証では、フードデリバリーにおいて荒川を渡り飲食物を対岸へ輸送した。

② 河川巡視
・DJI製「Matrice 300 RTK」

 最新の航空技術から着想を得て設計された産業用ドローン。安定した飛行性能と30倍ズームカメラ、360度衝突回避センサーなどの空撮機能を備え、点検や監視での利用に活用される。
 今回の実証では、河川巡視において、岩淵水門・低水護岸の空撮を行った。

飛行ルート

① フードデリバリー
 足立区都市農業公園前の荒川高水敷から荒川岩淵関緑地バーベキュー場まで、高度約50~100mで運航。

② 河川巡視
 荒川下流河川事務所屋上から高度約30mで一帯を運航。

飛行ルート

 同実証により、都市部のドローン物流において、河川上空の活用が有効であること、河川巡視において必要な画像データをドローンの自律飛行によって取得できることを確認した。また、物流用・河川巡視用の2機のドローンを同時に遠隔自律飛行させることで、複数用途のドローンの運航管理を1カ所に集約することの実用性・有効性の検証を行った。

 この結果を踏まえて4者は、将来のドローンの利活用拡大を見据え、河川上空利用ルールの策定を推進していくとしている。