2023年2月7日、ロジクトロンは、2023年1月20日に国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所が主催する実証実験で「緊急支援物資の運搬および大型運搬用ドローン飛行時の騒音計測」を行い、55分間で荒川を渡河するルート(約250m)を9往復、約230kgの緊急支援物資のピストン輸送に成功したことを発表した。

離陸の様子

 荒川下流部は人口や資産、社会経済活動の中枢機能が集まっており、将来的に河川上空において複数のドローンによる飛行が想定されている。国土交通省の取り組み「河川上空を活用したドローン物流の更なる活性化に向けた実証実験」に参加している荒川下流河川事務所が主催し、荒川下流管内におけるドローンの実飛行による実証実験を実施した。

実験を行った墨田緊急用船着場-堀切緊急用船着場間(約250m)。

 ロジクトロンが所有する産業用大型運搬ドローン「XYZ55」は、ペイロード(最大積載量)が55kg、2台のプロポを切り替えて運用できるため、離陸地点、荷降ろし地点それぞれでオペレーターが目視により操縦が可能である。

産業用大型運搬ドローン「XYZ55」

 ロジクトロンは今回、XYZ55で災害発生時等における緊急支援物資の運搬を想定した実証実験を計画。1月20日12時より空荷でのテストフライトを実施し、13時過ぎより本飛行を開始。物資はドローンから吊り下げて輸送した。途中2回のバッテリー交換を行いながら、55分間で川幅250mの経路を9往復し、約230kgの支援物資を予定通り運搬した。
 また今回の最大重量である50kgの水を運搬する際、騒音計測を実施。高度15mの機体直下で110db(自動車のクラクション程度)、25m地点で80db(走行中の電車内程度)を計測した。

実証実験の様子

 人口集中地区である東京都23区内で大型機を使用してのドローン物流実証実験は、2022年12月に施行された改正航空法で可能になった有人地帯における目視外飛行(レベル4)の実用化に向け、想定しうる最大サイズの機体で運搬能力や騒音等の確認を行えたという点で成果があったという。

 同社は衛星インターネット通信環境を備えた大型ドローン専用車両を配備するなど、災害発生時に迅速に活動できる体制を整えており、今後は各地方自治体との災害協定の締結等、協力関係の構築を進めるとしている。

実証実験について

実証概要
緊急用支援物資輸送/積載時騒音測定

実証地
荒川下流域 堀切緊急用船着場-墨田緊急用船着場間(約250m)

運用方法
・両岸2オペレーター
・AB間自動航行
・自動フック切り離し機構 等

緊急支援物資 (梱包資材重量含む)
・リゾット 400g×25袋(11kg)×14箱 ※1回に2箱ずつ運搬
・カップヌードル 78g×40個、水 2L×10本(26kg)
・水 2L×24本(50kg)
合計:非常食 390点+水 68L(梱包資材込 約230kg)

実証結果
・55分間で250m×9往復、総重量230kgの運搬に成功
・騒音計測(高度15m/50kg積載時)機体直下 110db、25m地点 80db

使用機体スペック

機体名称XYZ55
最大積載重量55kg
機体重量22.5kg
サイズ790×3,190×3,190mm
バッテリー規格リチウムイオン16セル25,000mAh×2個
その他機能・フェールセーフ機能
・バッテリー電圧降下警告
・自動着陸
・送信機と通信切断時ホバリング
・高度維持機能
・速度維持機能
・GNSS・Lバンド併用
・防塵・防水・防滴機能
運用性能・最高速度 70km/h
・最大到達高度 500m
・最大飛行距離 2,000m
・電波到達距離 2,000m
・飛行可能風速 最大7m/s
・最大飛行時間 30分(バッテリー残量最大20%)
・使用可能温度 5~40℃