2023年1月19日、日本電気(以下、NEC)は、同社の子会社でシリコンバレーにおいて新事業開発を行うNEC X, Inc.(以下、NEC X)が、ドローンを使った捜索・救助支援ソリューションを提供するスタートアップ「Flyhound Corporation(以下、Flyhound)」を設立したことを発表した。

 Flyhoundのソリューションは、NEC欧州研究所が開発した技術「SARDO」を使用したもので、ドローンによって行方不明者や災害被災者の携帯端末からのセルラー信号(※1)を三角測量して位置を特定し、捜索エリアのデジタル地図上でリアルタイムに表示することで捜索にかかる時間を短縮する。これにより、行方不明者の位置を30分以内に半径50mの精度で特定することができ、早期救助の実現に貢献する。

 アクティブな携帯電話ネットワークの信号を必要としないため、携帯電話ネットワークインフラが利用できない遠隔地や災害地域での使用に適している。赤外線カメラを搭載した既存の捜索救助用ドローンとは異なり、樹木や葉、建物などで視界が遮られた場合でも位置を特定し、地震や洪水による瓦礫が散在するような環境下でも被災者や行方不明者の居場所を予測する。

※1 基地局と携帯電話を接続する際の同期・認証や音声/データ通信に用いられる無線信号。

ドローン(市販品)のコントローラに表示された位置情報のイメージ
ドローン(市販品)に搭載したFlyhoundモジュール

 NEC Xの新事業創出プログラムでは、ビジネスとテクノロジーに精通した客員起業家(以下、EIR)(※2)に技術や研究者を紹介し、EIRは各々のビジネスアイデアを提案する。
 NEC欧州研究所が開発した技術と事業仮説がNEC Xに持ち込まれ、EIRを探すところから始まったFlyhoundは、EIRが決まりNEC Xのプログラムが始まると同時に公的機関を含むさまざまな組織に顧客インタビューを実施。ニーズを明確にした後にプロダクト開発に取り組み、複数の公的機関とともに実証実験を行った結果、有効性が評価され事業化に至ったという。

 今後Flyhoundは、NEC Xの事業創出プログラムの卒業に先立ち、2022年9月にはAlchemist Acceleratorのプログラム、11月にはカナダの大手電気通信事業者TELUSが提供するTELUS Community Safety & Wellness Acceleratorプログラムを卒業。今回のNEC Xからの卒業をもって、資金調達および事業成長に向けた活動を本格化している。

※2 Entrepreneur In Residence:起業家が企業に社員や業務委託として入り、新事業の立ち上げや起業の準備を行う仕組み。

各社コメント

NEC X President and CEO 井原成人氏

 パブリックセーフティや災害対応においては、短時間に大量のリソースを投入することが求められます。最小限の時間と費用で人命救助をサポートするFlyhoundのソリューションへのニーズは、常に高い状況です。Flyhoundが私たちのプログラムを卒業・スピンアウトし、今後大きな成功を収めることを期待しています。

Flyhound Co-Founder and CEO Manny Cerniglia氏

 私たちは、人命救助という重要な任務で公的機関を支援し、行方不明者を迅速に見つけることを使命としています。今回、NEC Xのプログラムに参画し、NEC研究者とともにNECの技術を実装したソリューションを立上げ、短時間で行方不明者の位置を特定し救助につなげることができるようになったことを誇りに思っています。