2022年12月12日、NTTデータ関西と愛媛県、西日本電信電話 四国支店、ザイナス、SAPジャパン、シャープ、電気興業、NTTアドバンステクノロジは、総務省「令和4年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に「高精度映像伝送による災害時の迅速な情報共有・意思決定の実現」を目的とした提案が採択されたことを発表した。

 この実証事業では、愛媛県大洲市の肱川(ひじかわ)河川敷において、「可搬型のローカル5G環境を構築し、ドローンを活用した高精細映像のリアルタイム伝送による被害概況の迅速な確認」「取得データを防災・減災ダッシュボードに集約、3Dモデル解析・360°ビュー化による被害概況の高度な可視化」により、自治体の災害時対応業務における各関係機関の状況認識の統一および迅速かつ的確な意思決定の実現に向けて実証を行うとしている。

 NTTデータ関西が実証コンソーシアムの代表機関として、2023年1月から3月まで同事業に取り組む。

 同実証は、ローカル5Gとキャリア5Gのハイブリッド接続や5G臨時局のリレー接続など、実運用を意識して実施する。

実証フィールド:愛媛県大洲市の肱川河川敷(2018年7月豪雨災害での被災地域)

1. ローカル5Gを活用できる環境を構築
 災害が発生したと仮定し、災害発生の第一報の後、災害発生地点の最寄り拠点となる愛媛県南予地方局大洲庁舎に、ローカル5G臨時基地局を設置。同時に、災害発生地点を当該ローカル5Gのエリアとできるように、リレー伝送が可能となるローカル5G中継装置を展開・設置する。

2. ドローンによる情報収集
 災害地点にローカル5G環境を構築した上で、映像伝送用ドローンや測量用ドローンを情報収集に活用。
 ドローンにより取得した現場映像について、災害対策本部で3Dモデル解析を行い、高精度の測量情報等をタイムリーに確認することで災害対策初動判断の材料に活用する。

各社の役割
NTTデータ関西・事業全体の調整および総括
・災害情報システムとダッシュボードとの連携に伴う改修
・実証事業報告書の全体とりまとめ
・全国自治体への他展開に向けた検討・活動
愛媛県および大洲市・実証地域の提供
・実証への助言等
西日本電信電話
四国支店
・ローカル5G環境の構築
・ドローン機器準備・運用
・技術実証・課題実証の実施
ザイナス・災害情報システムに関するダッシュボード構築、ドローン連携構築
・課題実証支援
SAPジャパン・災害情報システムに関するダッシュボード構築
・技術実証における技術的助言
シャープ・ローカル5Gシステム(基地局含む)、高精細映像伝送関連装置等の準備、運用、実証支援
電気興業・ローカル5Gシステム(レピーター)の準備、実証支援、エリア設計等の技術支援
NTTアドバンステクノロジ・技術実証、課題実証の詳細設計
・実証における分析、考察、評価

 自治体の災害対応では、現場の被害状況等の情報を各部署・機関で迅速かつ確実に共有し、状況認識の統一を図ることが求められる。あわせて、避難指示の発令判断や支援要請、被害現場への応急対策活動などに関する意思決定が迅速かつ的確に行われることが重要になる。

 今回の実証フィールドである愛媛県は、愛媛県下20市町が一体となり、災害情報システムや被災者支援連携システムの整備・運用に取り組んでいるが、2018年7月の豪雨災害では、被害状況について国や自治体から個別に届いた情報を収集することに時間を要し、初動の災害対応に改善の余地を残した。
 また、現地派遣によるヘリコプターテレビ中継システム(ヘリテレ)や被害現場の状況を撮影した写真画像は、LTE回線を利用して現場から災害対策本部へデータ伝送しているが、大容量となるため、LTE回線でのリアルタイム伝送にはネットワーク帯域の不足が懸念される。
 そのため、取得した災害状況の情報を災害対策本部や各部局へ迅速に伝送・伝達し、情報を活用するためには、新たな技術の活用が求められる。このほか、キャリア5Gやローカル5Gでカバーしきれない郊外や山間部ほど、災害発生リスクも高く、通信インフラが被災するリスクも考慮する必要がある。

 こうした自治体の災害時の情報収集における課題から、国・県・市町・関係機関による災害初動時の被害概況の迅速な共有につなげるため、ローカル5G環境を構築し、ドローンを活用した現場の高精細映像をリアルタイムに伝送するとともに、取得した映像データを災害情報システムの防災・減災ダッシュボードに集約し、3Dモデル解析等を行う実証に取り組むとしている。

 同実証の実施・検証により、災害時の情報収集における解決ソリューションの提供を目指す。災害発生リスクが高い山間部や河川等において、キャリア5Gエリア外の被害状況について、ローカル5G可搬型基地局をリレー接続することでドローン空撮映像や地上カメラ等での撮影映像を伝送し、被害概況の迅速な確認、取得データの定量的な分析(360° 3Dモデル化、災害概況の測量による可視化)などの情報収集および共有、意思決定を迅速に支援する高度化ソリューションの提供を目指すとともに、愛媛県および県下の市町をはじめ、全国の自治体への展開を図る方針だ。