2022年10月11日、三井E&Sマシナリーとゼンリンデータコムは、大分県の協力のもと、岡山県にいる点検作業者がドローンを遠隔操作して約250km離れた大分県の港湾クレーンを点検する実証実験を実施し、構造物の遠隔間接目視点検技術を確立したことを発表した。

 これにより、ベテラン技術者が現地に出向くことなく港湾クレーンの点検が可能となり、点検作業の効率化・省人化が期待される。ドローンの飛行と点検箇所の撮影は全て自動で行うため、操縦スキルに依存しない安定した撮影が可能だという。

 実証実験は、4G(LTE)回線を利用したドローンの遠隔操縦技術とドローン自動飛行によるクレーン点検技術を組み合わせ、遠隔地からの目視外飛行にて、ドローン自動飛行によるリアルタイムでの映像確認および画像撮影を実現する「遠隔ドローン自動飛行点検」の技術検証、実用化に向けての課題解決に向けた検証を目的に、大分県大分港 大在コンテナターミナル内の港湾クレーンにおいて、2022年3月14日〜17日に実施した。

 実証実験では、三井E&Sマシナリーが所有するDJI JAPANの産業用ドローン「Matrice 300 RTK」と同社のカメラ「Zenmuse H20」を使用した。ドローンの飛行制御には、RTK測位を活用したソフトバンクの高精度測位サービス「ichimill(イチミル)」を利用した。

 各社の役割として三井E&Sマシナリーは飛行申請、飛行ルートの設定および機体のオペレーション、遠隔地からのドローン操作・点検作業、ゼンリンデータコムは遠隔飛行ルート設定プログラムの作成、遠隔地のドローン操作技術の調査および関係各社との調整、各種申請関連の支援、大分県は実証実験の実施場所の提供を行った。

 実証実験では、点検作業者を約250km離れた岡山県の三井E&Sマシナリー玉野機械工場に配置、ドローンの離着陸地点をメンテナンスハウス周辺に設置し、点検対象とした港湾クレーンまでの飛行経路と点検箇所(CG画面上で設定)の撮影を設定した自動飛行ルートを事前に作成した。現地では、玉野機械工場にいる点検作業者からの飛行開始の指令を受信したドローンが自動飛行ルートに従って飛行し、4G(LTE)回線を通じて撮影および点検箇所の映像のリアルタイム配信を実施した。
 リアルタイムで点検箇所の状態を確認する中で、腐食などが激しく詳細に確認したい箇所があった場合は、自動飛行から手動飛行に切り替えてカメラを調整することで詳細に確認可能であることも検証した。

 今回の実証実験により、ドローンによる遠隔間接目視点検において課題となる、映像伝送遅延、4G(LTE)回線の接続断による対応について、運用可能なレベルにあることを確認した。

課題1:映像伝送遅延
 遠隔操作・確認用端末の操作入力から結果反映まで、最速で0.46秒を実現可能で、遠隔間接目視点検において十分に利用可能。

課題2:4G(LTE)回線の接続断による対応
 4G(LTE)回線接続断になった場合、ドローンはその場でホバリング体勢を維持し、回線接続が復旧したのち、残りの点検箇所の撮影を安全に問題なく実施できることを確認した。

 ドローンで自動撮影した画像は、三井E&Sマシナリーの港湾クレーンの次世代遠隔モニタリングシステム「CARMS」の機能の1つである「クレーン構造物点検管理」で点検結果とともにクラウドに蓄積することで、効率的な運用管理が可能になるという。ゼンリンデータコムは撮影した画像を解析することにより、自動で発錆(はっせい)の有無やサビの定量評価(点検箇所に占める発錆量を数値化)が可能になる技術開発を進めるとしている。