2022年9月30日、AIソリューション会社のHACARUSは、シンガポールの大手物流企業YCHグループとともに、ドローンで撮像された画像に対してAIを活用し、倉庫内にあるパレット上の段ボール箱の自動計数を実現したことを発表した。

 YCHグループは、シンガポール政府機関であるIMDAが運営するオープンイノベーションプラットフォーム「IMDA Open Innovation Platform(OIP)」を通じて、ドローンで撮像された画像のさらなる活用方法を模索していた。同グループはDX推進の一環として、さまざまな業務を撮像するために多数のドローンを配備してきた。対象業務には定常的な棚卸も含まれており、その精度や効率の向上を目指している。

 人による棚卸作業では、通路ごとに少なくとも700パレットある積み荷を降ろして確認するといった作業が必要になるため、通路ごとに2人で最大8時間を要する。ドローンは5分でセットアップ可能で、その後14分で倉庫内の通路を一つ撮影できることから、ドローンデータの高度な分析による作業時間の削減が期待されていた。

 この課題とHACARUSのAIを用いた提案がOIPを通じてマッチングし、8月に第一フェーズを完了した。第一フェーズではパレット上の段ボール箱を正確に検出してカウントするAIを構築し、その性能を検証。その結果、このAIの開発をすすめていくことで作業時間を最大85%短縮することが見込まれている。今後HACARUSは、ドローンデータとYCHグループの倉庫管理システム(WMS)を連携するAIソリューションを構築する方針だ。

AIを用いて段ボール箱を検出・計数したドローン画像の例

 両社は第一フェーズでの検証結果に基づき、より多くのドローンデータを使用して堅牢なAIモデルを構築し、その新しいAIをYCHグループの既存のWMSに統合して2023年中の利用開始を目指すとしている。また両社は、その初期導入の段階から倉庫管理のオペレーションにおけるコスト削減を期待しており、さらに欠陥の自動検出や、より洗練された在庫照合システムの開発も計画している。