2022年9月28日、大和ライフネクストは、大和ハウスパーキング、大和物流、上空シェアリングサービスを手掛けるトルビズオンとともに、福岡市の協力のもと「ドローン空域構想 SKY-D」の第1回目の実証実験を、2022年9月13日に実施したことを発表した。

 「ドローン空域構想 SKY-D」とは、ドローンが自由に飛行可能な「空の道」を創造することで、災害支援(Disaster Support)や配送(Delivery)などを次のフェーズへと進化させる空域開発(Airspace Development)プロジェクトだ。なお、この事業は「福岡市実証実験 フルサポート事業」に採択されている。

 実証実験では、大和ハウスグループの管理建物の上空から、ドローンで撮影可能な範囲と画質を確認する。事故や災害が発生した場合に自治体が状況確認の一つの手段として使用しているカメラ映像を、ドローンで撮影した動画が補完可能かを検証する。
 具体的には、自治体のカメラ映像では構造物等の外的要因により直接確認が難しいと予想される地点に、災害発生場所として旗を設置する。大和ハウスグループの管理建物からドローンを上空に垂直飛行させ、旗を撮影。取得した映像データを確認し、検証等を行う。

実証実験の様子

 その結果、高度約60m地点で、災害発生場所として設置した旗の撮影に成功した。構造物等の外的要因により自治体のカメラでは直接確認が難しいと予想される場合において、別アングルからのドローンによる撮影が補完的な役割を担えることが実証された。

 福岡市消防局は、「将来的にドローンが物流などの用途で都市部等を飛行できるようになった場合、飛行しているドローンの位置および高度によっては、消防活動における情報収集に活用できる可能性がある」とコメントしている。

ドローン撮影動画 ①
ドローン撮影動画 ②

実証実験の成果

①関係各所との調整におけるノウハウの獲得
 屋上でドローン飛行を行うにあたり、土地・建物所有者および建物管理者からの許可を得るための事前調整に多くの時間的・作業的コストが発生するが、今回のように大和ハウスグループの管理する建物であれば、比較的スムーズに実施することが可能であることを確認した。
 一方で、調整作業を今後より一般的なスキームへと落とし込むためには、ドローン飛行の規制緩和に合わせ、行政による確認事項のチェックリスト化や申請フローのフォーマット化、建物における認定制度など土地・建物所有者へのインセンティブが必要になると考えられる。

②屋上の構造的条件の把握
 建物の屋上をドローンの離着陸地点として安全に使用するには多くの条件をクリアする必要があることが実証された。今回確認した条件は、将来の空域開発における離着陸地点の選定において有用となると考えられる。

③ドローン映像の活用可能レベルと、飛行可能範囲拡大の重要性の再確認
 飛行高度および周辺建物などの影響により撮影範囲や撮影距離、撮影対象が大きく変わってくるため、飛行高度の制限や離着陸地点の立地を踏まえ、使用するカメラの仕様や撮影映像の活用方法を決定することが必要であることが実証された。
 広い範囲での状況把握(火災時の煙など)には、今回のような比較的遠距離からの撮影が有効であると考えられる。一方、目的地点からの距離が離れるほど風の影響を受けやすいため、より細部の情報を確認するためには近距離からの撮影が望ましく、今後飛行可能範囲を拡大していくことにより、例えば防犯的な側面など、より幅広い活用が検討可能となる。

 今後の実証実験の展開としては、福岡市内の管理建物・駐車場を中心に権利関係者と調整を進め、災害時のドローン配送を想定した第2回目の実証実験の実施を検討するとしている。またその際、配送用のドローンにカメラを搭載し、配送と同時に水平飛行撮影を行うことで、防災・防犯、その他映像活用の観点でも検証を実施する。

 サービスの社会実装を実現するには、地域を巻き込んでドローンに対する社会受容性を高めていく必要があるため、ドローン空域構想SKY-Dは、上空シェアリングサービスを手がけるトルビズオンと連携することで実現可能なモデル構築を進めるとしている。また、物流等での日常的利用の検証を進めていくため、大和ハウスグループの大和物流が次の実証実験より同プロジェクトに本格参入する。