2022年9月9日、名古屋大学の研究グループは、慶應義塾大学との共同研究において、ドローンや空飛ぶクルマによる騒音とストレスの関係について、一度大きな騒音にさらされると音が小さくなっても無意識のストレスは低減されにくい、ということを発表した。

 同研究では、空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子(図1)を体感できるシミュレータ(図2)を用意し、影響の大きい騒音について、意識的なアンケート調査と簡易脳波計測に基づく無意識的な感性アナライザ(図3)によるストレス度評価を比較した。

 アンケートによる社会心理学的評価では意識的なストレス度を評価し、感性アナライザを用いた簡易脳波計測によるリアルタイム評価では、生体信号に基づくことで無意識的なストレス度を評価する。頭上を通過する産業用ドローンの飛行音を加工した音源の音量を変えながら何度も聞くことにより発生する、アンケート評価と脳波計測によるストレス度評価の違いについて明らかにした。

図1:空飛ぶクルマが頭上を飛行する様子のCGアニメーション
図2:名古屋大学 航空・機械実験棟 飛行性能評価風洞施設に用意したシミュレータ
図3:感性アナライザ(左:簡単な脳波計とタブレットから成るシステム、右:装着時)

 その結果、一度大きな騒音にさらされた後、音を小さくすると、アンケートではストレスが解消される傾向を示すのに対して(図4)、感性アナライザでは無意識のストレスが解消されにくいことがわかった(図5)。

 このことは、空のインフラを展開させる上でのガイドライン策定や、地上社会にやさしい革新的機体を生み出す上で重要な知見になるものと期待されるとしている。

 なお、この研究成果は、2022年9月7日付の日本UAS産業振興協議会(JUIDA)発行技術論文集「Technical Journal of Advanced Mobility」(https://uas-japan.org/journal/)に掲載された。

図4:アンケートによるストレス度の評価結果例
図5:感性アナライザによるストレス度の評価結果例