2022年8月25日、パナソニック インダストリーと名古屋大学、山形大学、秋田大学は、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と共同で、「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の共同研究を開始したことを発表した。

 4者は、2020年に開始したJAXA宇宙探査イノベーションハブ「アイデア型」研究テーマにおけるカーボンナノチューブの研究内容をさらに発展させるため、2021年のステップアップ審査により「課題解決型」に選考され、2022年6月より超軽量電磁波遮蔽材料技術の共同研究を開始した。2024年の実用化を目指すとしている。

超軽量電磁波遮蔽材料

 宇宙分野では人工衛星などの質量低減を図るため、機体の数十パーセントの質量を占める機内通信・給電用ケーブルの無線化の研究が進められている。その実現には、電磁両立性(EMC)(※1)確保のため、高度な電磁波遮蔽技術が求められる。また、地上空間におけるドローン・eVTOLといった環境負荷が低い電動航空機の普及に向けても同様に、軽量化と電磁波対策の両立が求められている。
 さらに、5G・6Gといった無線通信の高速化・高周波化に伴い、ミリ波帯からテラヘルツ波帯への対応と軽量化を両立する電磁波遮蔽材料の必要性が高まると予測される。

※1 電磁両立性(EMC):electromagnetic compatibilityの略。電気・電子機器が発する電磁波(電磁ノイズ)が周辺の機器に影響を与えず、自らも周辺からの電磁波(ノイズ)の影響を受けずに動作する耐性のこと。

 超軽量電磁波遮蔽材料は、名古屋大学の研究によるカーボンナノチューブを用いた超軽量材料と、パナソニック インダストリーが保有する熱硬化性樹脂の配合設計の組み合わせにより、一般的な電磁波遮蔽材料の中でも軽量なアルミニウムの270分の1の軽さ(かさ密度0.01g/cm3レベル)を実現しながら同等の電磁波遮蔽性能を有しているという。
 周波数に合わせて遮蔽性能を調整でき、EMC設計も容易。電磁波吸収性能を備え、CPUなどのデバイス自らが発するノイズの多重反射を防ぎ、ノイズ重畳によるデバイスの特性劣化を防止する。さまざまな立体構造を作成することができ、採用機器の形状に応じた加工が可能である。

アルミ二ウムと新材料のかさ密度比較
新材料の電磁波遮蔽効果
アルミニウムと新材料の対応周波数帯域差