2022年7月29日、日本アビオニクスは、ドローン搭載用赤外線サーモグラフィの実証実験を開始し、協力企業を募集することを発表した。同実証により、ドローン搭載用赤外線サーモグラフィに必要とされる用途ごとの機能や性能を検証し、将来的な製品仕様に反映させることを目指すとしている。

装置外観
ドローン搭載例

 使用する装置は、同社が参画する2020年度NEDO事業「規制の精緻化に向けたデジタル技術の開発/ドローン等を活用した建築物の外壁の定期調査に係る技術開発」により開発された、「近接調査用ドローンシステム」搭載の同社開発機をベースとしたもの。

 協力企業に装置を無償で貸し出し、終了後にレポートを提出してもらう。必要があれば技術的サポートも実施するとしている。実証実験を通して得たデータにより、さまざまなアプリケーションに対して赤外線サーモグラフィをドローンに搭載した際の問題点、必要となる仕様、性能を検証する。

 対象とするのは、既にドローンによる調査業務を実施しており、今後、赤外線サーモグラフィによる調査を実施する予定のある企業。募集期間は2022年8月1日~2022年12月23日。貸出し期間は1カ月間。なお、日本国内での使用が前提となる。

 熱分布を可視化する赤外線サーモグラフィは、コンクリート構造物や電力設備など社会インフラや工場内施設などの調査・点検の場で広く活用されている。
 労働者の高齢化により、調査・点検市場では、従来、人が地上から撮影していた赤外線サーモグラフィをドローンに搭載するニーズが増加傾向にある。現在国内に流通しているドローン搭載用赤外線サーモグラフィは海外製のみとなっており、国産専門メーカーによる市場投入が期待されている。

装置の主な特長

 さまざまな調査業務での使用を考慮し、飛行中に生じるドローン特有の外乱の影響を軽減させ、地上からの赤外線サーモグラフィ計測とほぼ同等の性能を持つことを主眼に置いて開発された。

 高解像度イメージセンサーを搭載。構造物調査業務等にも使用可能な解像度を備える。
・赤外線センサー:30万画素(640×480画素)
・可視カメラ:4K画素(3,840×2,160画素)

ドローン搭載飛行時の可視画像(左)・熱画像(右)

 プロペラ風の影響による熱画像のシェーディング現象を抑制し、飛行中でも地上機と同等の熱画像を取得する。面内均一性:±1℃。
 シェーディング現象とは、飛行中、ドローンのプロペラにより生じるダウンウォッシュが赤外線サーモグラフィ光学系に熱的な影響を与えることにより熱画像上に生じる疑似的な温度分布のこと。同装置では飛行中装置に与えられる熱的な影響を抑制し、シェーディング現象を抑えた熱画像を表示する。

シェーディング現象比較

 ドローン搭載を前提とした小型で軽量な構造。外形寸法125×66×68mm、本体重量は約430g(ジンバルは含まず)。

基本仕様