2022年7月26日、AI・ディープラーニング技術のコンサルティング・開発を行うRidge-i(以下、リッジアイ)と、3次元計測ビジネスを展開するクモノスコーポレーション(以下、クモノス)は、50%以上の工数削減を見込む点群ノイズ除去自動化AI「ANJU」を共同開発したことを発表した。
 これまでデータの取得から提供までに平均10日を要していたものが、最短4日で提供可能になる。また、AIの成長に伴い、今後さらなる処理の高速化を見込んでいるという。

 デジタルツインデータは、3Dレーザースキャナ(以下、LiDAR)や、車両など移動体にLiDARを搭載して計測するMMS(モービルマッピングシステム)、ドローンなどで対象物を計測して得た3D点群データに対し、データ合成やノイズ(対象物以外の意図せず計測されてしまう通行人や車、埃などのデータ)除去等の処理を行って生成する。
 今回開発したAIは、このうちノイズ除去作業を自動化させるものとなる。従来は技術者が専用ソフトを使い、取得した3D点群データからこれらのノイズを手作業で除去していた。街やプラント等の大規模データの場合、データの取得から提供までに平均10日を要していたが、この作業を自動化した結果、50%以上の工数を削減し、最短4日で提供が可能になった。
 同AIは大規模点群データ(数十億点以上)からノイズ除去を行うほか、ノイズ以外のさまざまな物体の検出にも応用が可能。点群解析に特化している。

LiDARの計測データ(赤点がノイズ)
点群ノイズ除去自動化AI「ANJU」を利用してノイズ除去を行った点群データ例

 両社は、デジタルツインデータの提供までにかかる工程の中でボトルネックであったノイズ除去作業に着目し、ノイズ除去処理の自動化AIの共同開発プロジェクトを進めてきた。今回、リッジアイのAI実装力と、クモノスが保有する点群データおよびノイズ除去業務のノウハウにより、大規模点群データに対するノイズ除去を可能としたAIの開発に至ったという。

 今後両社はノイズ除去自動化AIを活用し、建物内部や街並等を3Dスキャンしてバーチャルリアリティを実現するサービス「Virtual Visit」の展開と合わせて、他事業者のノイズ除去作業の請負を開始するとしている。
 また、点群データを処理するにつれ学習が進みAIが成長するため、今後さらなる処理の高速化が見込まれるという。データ納品の期間と品質を改善することで、業界全体のデジタルツインの加速化に向けて共同事業化を進めていく方針だ。