2022年6月29日、テラドローンは、海外グループ会社であるユニフライ(本社:ベルギー)が、デンマークのドローンを活用した医療品輸送プロジェクト「HealthDrone」において、約50kmの長距離医療品輸送に成功したことを発表した。
 フェリーや車による従来の輸送時間75分を40分に削減し、患者に対する迅速な治療が可能となる。

 Health Droneは、イノベーションファンドの支援を受け、デンマークの医療制度へドローンを活用した医療品輸送のスキームの導入を目指す、3年間のプロジェクトである。病棟、医療センター、在宅医療間で患者サンプル、医薬品、医療機器を輸送するための医療用ドローンの開発と実証を目的としている。

 このプロジェクトにおいてユニフライは、米国で特許取得済みの運航管理を提供している。

南デンマーク大学(SDU)製ドローン

 実証は2022年5月30日に実施。スベンボーにあるオーデンセ大学病院から約50km離れたエーロ島まで、ドローンにより血液や医療品を輸送した。

 このプロジェクトのように空域を制限せずにドローンを飛行させる事例は欧州では珍しく、運航管理技術を開発するユニフライは、デンマーク運輸省傘下の国有企業Naviair、デンマーク交通局と共に、南デンマーク大学(SDU)にて開発した、ヘリコプターや航空機を安全に回避する運航管理システムの技術を活用して実現したという。
 Naviairの航空管制官は、ドローンの飛行が計画通りに行われているか画面上で確認でき、例えば救助用のヘリコプターの飛行など、万が一の時はその場で航路の調整が可能である。

 従来、離島の住人が血液検査を実施する場合は、フェリーと自動車を使って血液サンプルを病院まで持参する必要があった。今回のプロジェクトのように医療用ドローンを使用することで、住人が病院に出向かなくとも血液サンプルを輸送できるため、迅速な検査が実現する。

ドローンを無線接続で送り出す準備をする、デンマーク交通大臣のトライン・ブラムセン氏(中央)

 今後、病院や研究所、医療センター、老人ホーム、在宅介護の間で、医薬品や機器の輸送を実施する予定だという。デンマーク政府の新しい医療制度改革に伴い、同プロジェクトを離島や病院から遠方の地域にも拡充する方針だ。

HealthDroneのフライトで使用したユニフライのUTMシステム