2022年6月7日、パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、PwCコンサルティングと共同で「ドローンユーザーの動向調査」を実施し、調査結果を公開した。
今年度は、ドローンの「有人地帯における目視外飛行(レベル4)」が解禁され、ドローンの利活用がさらに拡大すると想定される。利活用が進む中、現場の抱えている課題や解決に向けて期待されるサービス・予算感について実態を把握することを目的に、昨年に引き続き全国の会社員、自治体職員を対象とした「ドローンユーザーの動向調査」を実施した。
サービス利用状況
・ すべての回答者のうち「ドローンの利用実績あり」と回答した割合は16.8%。
・ ユースケースは土木、災害、点検・警備が大半を占める。中小規模(300人未満の組織を定義)の企業・団体(以下、中小)は空撮も多かった。
・ 実用化段階は昨年と比してやや進展し、活用レベルは「業務スコープの拡大」や「新たなサービス創出」の動きが強まった。
活用上の課題と解決策
・ ドローン活用上の課題として「飛行の安全性」や「規制による飛行制限」を挙げる回答者が多く、中小は「スキル不足」も多かった。
・ 課題の解決に期待するサービスとして、安全性には「計画策定や管理」「セキュリティ面の支援」、規制には「計画策定」や「政府・自治体との調整」、スキル不足には「人材育成・紹介」等が挙がった。
今後期待されるサービス・施策
・ 今後レベル4解禁等に伴い期待するサービスとして、「ロジスティクス」「機体リース」等、モノに関連するサービスを挙げる回答者が多く、中小ではセキュリティ等安全リスクを軽減するサービスが多く挙げられた。
「ドローンユーザーの動向調査」概要
・ 調査期間:2022年4月
・ 有効回答数:1,095件
・ 調査方法:インターネット調査
・ 調査対象:日本全国の企業・自治体(うち約2割が300人未満、約4割が3,000人以上の規模)
・ 企画、開発、営業、設備管理・運営等の所管・所属で、経営者・役員を含む課長以上の役職層
・ 調査項目:ドローン実用化状況および実用化における課題、解決に向けて期待するサービスについて
※ウエイトバック集計により小数点以下が発生している。小数点以下の切り上げ、切り下げにより回答人数と各回答数の合計が異なる箇所がある。
主な調査結果
ドローンの実用化状況
今回の調査結果では、有効回答数1,095件のうち、「ドローンの利用実績あり」と回答したのは184件、全体の16.8%。「利用している、かつ実用化に向けて計画がある」と回答したのは138件となり、全体の12.6%であった。
「利用実績あり」または「検討実績あり」と回答したユーザーの具体的なユースケースは、主に「土木・建設(現場現状把握)・(測量)」「公共(災害現場状況把握)」を中心にドローンの実用化が進んでいるという結果であった。中小規模の企業・団体のみを見ると「空撮(観光・イベント向け)」のユースケースも上位となった。
「実用実績あり」と回答したユーザーの実用化段階は、約50%が「社内運用展開」「社内実用化」あるいは「社外事業展開」まで進んでいることがわかった。昨年と比較して、実用化が進展したケースの割合が約3%増えた。
同様のユーザーに、目指す活用レベルについて聞いたところ、昨年と比較して業務の部分的な代替を目指す動きから、業務の全体的な代替およびドローンを起点とした新たなサービスの創出を目指すと回答したユーザーが増えていた。
活用上の課題と解決策
「利用実績のある」ユーザーでは、活用上の課題について「安全性」を挙げる回答者が最も多くなった。また、「検討実績あり」のユーザーでは「規制による飛行制限」「資格・ライセンス」等の外的な制約を挙げる割合が上位となり、「未検討」のユーザーは「運用コスト」「スキル不足」等の内的な課題が上位となった。
上記の質問で課題として多く挙がった「飛行上の安全性」「規制による飛行制限」「スキル不足」に関して、解決に向けて期待するサービスでは、安全性には「飛行計画策定/申請」や「プロジェクト/運航/安全管理」、規制については「飛行計画策定/申請」「政府・自治体調整」、スキル不足には「人材育成」「人材紹介・人材派遣」等が多かった。
今後ユーザーが期待するサービス
今後、有人地帯における目視外飛行(レベル4)の解禁に伴いユーザーが期待するサービスは「ロジスティックス」や「機体リース/シェアリング」等、“モノ”を扱う内容が多い結果であった。また、「ロジスティックス」「セキュリティ設計・実装」のサービスに高額を許容する回答が見られた。
上記の調査結果以外にも、調査報告書には「今後期待される補助金・助成金の対象」や「ドローンサービスの品質保証サービスに対する期待」などがまとまっている。
▼2022年実施 国内ドローン実用化調査報告書(パーソルP&T)
https://www.persol-pt.co.jp/drone/download/form-19/
今年度の動向として期待されている「レベル4」解禁により、ドローンの利便性は向上します。
現在、政策や技術開発は、ユーザーのドローン利活用を見据えた検討・検証が一段深く進みつつある一方で、ドローンユーザー・サービス提供者が他社動向を参考にする詳細レポートが無く、感覚的な期待値でものごとが検証されてしまうシーンが見受けられる事もあります。
本レポートをファクトデータとして活用する事で、さまざまなシーンにおける仮説立てや注力ポイントの選定・検討の一助となれば幸いです。
パーソルP&Tは総合人材サービス企業として、全ての企業をご支援する中立的な立場で、社会や企業のニーズを汲み取り、ドローンユーザーとドローンサービス提供者の双方にとって有益な情報を提供していきます。また、これらを通して、ドローンの社会実装や実用化の一役を担っていきたいと考えています。
パーソルP&T ドローンソリューション部 部長 前田晋吾 氏