2022年5月25日、アルプスアルパインは、ドローンの識別情報である機体固有ID(登録記号)や機体の位置情報などを電波で発信する、国土交通省が定める仕様に準拠した無線送信機「リモートID機器」の量産を5月下旬より開始することを発表した。
2022年6月20日の改正航空法施行により機体の登録と固有IDの掲示が義務化されるドローンに向けたもので、すでにイームズロボティクスへの採用が決まっており、同社経由で他ドローンメーカーへの販売も行うとしている。将来的にはドローン以外の移動体への活用も想定して開発を進めるという。
少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により懸念される労働力不足を補う施策の一つとして、ドローンの活用が期待されている。特に地方においては、各地にある配送拠点から最終宅配地点までのラストワンマイルをつなぐ物流の短距離輸送手段として大きなニーズが見込まれる。また、危険な高所や山間部などにおけるインフラ等の各種設備点検に応用することで、安全・効率的に作業できる。一方で、飛行時にドローン同士が衝突する危険や墜落後に回収するための位置特定の難しさなど、その運用には課題がある。
こうした課題を解決するため、改正航空法では離陸重量が100g以上のドローンは国土交通省が運用する「ドローン登録システム(DIPS-REG)」への登録および登録すると得られる登録記号を機体へ掲示することが義務付けられる。また飛行中は、自動車のナンバープレートのように機体に掲示するだけでは地上から確認できないため、登録記号などの情報を電波に乗せて送信する「リモートID」の搭載が必須となる。
アルプスアルパインが開発したリモートID機器は、内蔵されたGNSS(全地球測位システム)により機体の位置を特定し、Bluetooth5.0 Low Energy Long Rangeに対応した自社開発のモジュールで登録記号を送信する。通信距離は実用で1,500m以上となる。IDの取得および遠隔確認には専用アプリケーションを用いる。自社開発の気圧センサにより気圧高度にも対応。後付けができるため、既にドローンを所有していても航空法の基準に適合させることが可能だ。
筐体サイズはW60×H30×D18mm、リチウムイオンバッテリーを内蔵しながら重さは約33gと小型軽量。防塵・防水規格はIP54相当となっている。USBコネクタにより外部機器の接続が可能。将来的にはソフトウェアのアップデートを行うことで、登録記号の送信に依らない通信技術を応用した機能拡張も搭載するとしている。
今後はイームズロボティクスと連携して産業用ドローン向けの販売を進め、将来的にはアルプスアルパインが開発を進める「障害物検知ユニット」を搭載した高齢者向け電動カートやシェアサイクルなど、少子高齢化の加速やシェアリングエコノミーの発展に伴って固有IDによる位置情報特定が求められることが想定される移動体への応用も検討するとしている。
「リモートID機器」主な仕様 | |
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製品名 | 「リモートID機器」 |
外形サイズ | W60×H30×D18(mm) |
本体重量 | 約33g |
コネクタ | USB Type C |
動作温度 | -10~60℃ |
電源電圧 | +5.0V |
動作湿度 | 85%RH以下(結露無きこと) |
防塵防水性能 | IP54相当 |
通信方式 | Bluetooth5.0 LE Class1.5 |