テラ・ラボは、2022年3月16日に発生した最大震度6強の福島県沖地震において、被害の大きい福島から宮城県を中心に、発生翌日から航空機やドローン、衛星を活用して情報収集、解析を行っている。同社は災害発生から数日間で地図(共通状況図)を作成し、被害状況の把握を可視化した。

 共通状況図とは、災害発生直の道路や河川、住宅地図などと重ね合わせることで被災前の状況と比較でき、被害全容の把握が可能になる地図のこと。捜索や救助、初動の意思決定に役立てられる。

福島県南相馬市の調査

3月17日(発災翌日)

1. ドローンによる広域災害調査を行い、動画を地図と連携
 同社と連携協定を締結した南相馬市を対象に、発災翌朝から市内全域のドローンによる調査を実施。市内8カ所を上空から撮影し、データを取集した。その後も随時、映像を追加しているという。
 地図上にデータ収集した動画と連携したWEBアプリケーション(撮影場所を可視化し、広域の被害状況を把握できる)を作成し、当日中に南相馬市役所へ提供した。

ドローンによる広域災害調査(南相馬市内)

▼提供した共通状況図(ドローンによる広域災害調査 空撮動画エリア:南相馬市)
https://terra-labo.net/platform/apps/MapTour/index.html?appid=cc9cc7399a5048d595c4a74789bd95f7

2. 長距離飛行が可能な航空機を手配して空撮を実施

 15時に県営名古屋空港を離陸し福島県上空へ移動。東北新幹線が脱線した宮城県白石市の上空から被害現場を撮影。その後、福島県相馬市から南下し、南相馬市、浪江町、双葉町の順に撮影。さらに福島原発周辺を撮影し、18時、県営名古屋空港へ着陸した。

3. 航空測量用の簡易オルソ画像を作成するため写真を撮影

 12時30分から15時にかけて福島県南相馬市の上空から撮影。市内全体を往復し、データを収集した(469枚)。

3月18日

1. 解析開始
 南相馬市全体の地上解像度2mのオルソ画像を作成した。

地上分解能2mのオルソ画像

3月19日

 南相馬市全体の地上解像度20cm(前日の10倍の解像度)のオルソ画像を作成。このオルソ画像をもとに共通状況図を作成し、南相馬市役所へ提供。クラウド上で一般公開した。

地上分解能20cmのオルソ画像1
地上分解能20cmのオルソ画像2
公開した共通状況図(Common Operational Picture)

▼提供した共通状況図(航空機による広域災害調査 オルソマップ:南相馬市)
https://terra-labo.net/platform/apps/webappviewer/index.html?id=615f5fdea509469684495d62cdd0c9e2

新幹線脱線現場の調査

3月17日(発災翌日)

1. 衛星(ESA、Sentinel)を活用した地図作成

 地震発生前後の被災エリア全体の地図を衛星から取得して比較検証を進めている。特に新幹線脱線現場は常磐道の大きな亀裂が入ったエリアでもあり、地形の隆起沈下が影響したことも視野に調査を続けているという。

3月19日

1. 高精度カメラ・LiDAR搭載ドローンによるデータ収集

新幹線脱線現場を調査した高精度ドローン
3月18日、地上から撮影した新幹線脱線現場
新幹線脱線現場付近の橋脚の様子

 3月17日に航空機で脱線現場を特定後、翌18日、ドローンによる地上調査班を宮城県白石市に派遣した。
 LiDAR搭載ドローンを活用し、3月19日には高密度点群データにより被害現場の3次元データを生成した。これにより、車両をはじめ橋脚や線路、電線の状態などを離れた場所からでも複合的に点検ができるほか、二次災害リスクを予測できる可能性もあるという。
 衛星SARによる脱線現場付近の土地の沈下、隆起の実測調査も同時に進めており、今回の地震と新幹線脱線事故との因果関係も調査している。

航空機からの空撮画像
高精度カメラによる新幹線脱輪現場
LiDARによる新幹線脱線現場1
LiDARによる新幹線脱線現場2

 災害の規模が大きくなるほど状況把握に空白地帯ができる可能性もあるため、同社は有事だけでなく平時から空域からの広域な情報収集を行い、災害前後の比較検証を迅速に行うとともに、いち早く各関係機関と連携して情報提供する体制づくりを強化していくとしている。