2021年1月27日、パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)と国立開発研究法人 防災科学技術研究所(以下、防災科研)は、災害対応ドローンソリューション「GEORIS(ジオリス)」のサービス開発に向けて協業を開始することを発表した。

 災害発生時において、現場での意思決定と対応には迅速かつ正確な情報収集が重要である。現在の災害現場における救助活動では被災状況の撮影にドローンが活用されはじめているものの、その情報集約にあたっては未だに紙の地図の上に敷いた透明シートに情報を書き込むことで災害状況を把握するなど、災害対応の一連の流れの中で最新のテクノロジーが十分に活用されておらず、意思決定に必要な情報を集めるには膨大な時間がかかっている。

 防災科研はこの課題に対しドローンによる災害状況把握技術の研究開発を続けてきており、今回、パーソルP&Tと防災科研が協力し災害状況把握技術の社会実装を進めていく。

WEB-GIS:インターネット上で利用可能なマッピングシステム(地理情報システム)

災害対応ドローンソリューション「GEORIS」の概要

 災害現場でのドローン活用の定着化には、現場活動に最適化したシステムと、これらの知識セットの教育プログラムが必要不可欠である。
 そこで、防災科研が災害現場でのドローンの安全運航と取得した情報の解釈のための科学的な知識体系を確立し、パーソルP&Tがそれらを元に、自治体等のユーザーに対してソフトウェア提供と知識教育を行う。
 ドローン運航者のコンピテンシー(職能)モデルを実現し、ドローンによる情報収集と情報解釈により、災害時の「誰がドローンを操作して、どのような情報を得て、誰が判断するのか?」という意思決定プロセスを安全かつ効率的にしていく。
 これまで多大な時間と労力をかけて行われた災害情報の把握や、その後の捜索・救助などの現場活動の時間を短縮し、さらに現場と災害対策本部など、広域・多機関での情報共有を迅速に行うことで災害活動の効率を上げ、現場の安全性向上にもつなげる事が可能となるソリューションを提供する予定である。

災害対応ドローンソリューション導入のメリット

パーソルP&Tにおける関連する取り組み

 パーソルP&Tでは、2019年、広島県神石高原町にて「いつまでも安心して暮らせるまちづくり」を目指し、直面する災害対策や物資配送等の課題をドローンを活用して解決するために設立されたドローンコンソーシアムに参画し、ドローン技術を持つ企業や団体と共に防災・減災、地方の生活者支援、地方創生といった日本全体の社会課題に向けた取り組みを実施した。[ドローンコンソーシアム 地域の担い手によるドローン公開実証実験を実施 https://www.persol-pt.co.jp/news/2020/02/27/4176/(2020/2/27)]

 同社はドローンなどのテクノロジーやプロセス設計の知見を活かし、体制構築・業務設計・人材育成のサービスを通してユーザーがドローンを活用する為の組織作りを支援している。また、人材に関わる各種事業者免許を取得している為、ドローンに関する知見を保有する専門家・技術者がユーザー組織内の人材として支援できることを強みにもつ。
 ユーザー組織の内外からドローンの組織実装(実用化)を推進し、企業や自治体の生産性における課題を解決していくことで、グループビジョンである「はたらいて、笑おう。」の実現を目指していく。

防災科研における災害状況把握技術の研究開発とドローン活用の取り組み

 防災科研では、2013年より災害初期対応における状況把握技術の一つとしてドローンを活用した研究開発を行ってきた。その中で、これまでの多くの自然災害においてドローンによる情報収集を行い、防災関係機関等への情報提供をはじめとした現場におけるドローン活用を実践・実証してきている。
 2019年からは、広島県神石高原町においてドローンを活用して防災・減災を目指す「地産地防プロジェクト」を立ち上げ、ドローンを実際に運航する町民の操縦者(担い手)の育成、担い手による発災直後のドローンによるマップ作成および担い手による発災後の緊急物資輸送等を行うなど、災害現場での情報活用・共有を円滑にするWEB-GISベースのマッピングシステムおよび運航リスク管理、情報の解釈、自然災害の多様性への適応などのドローン活用の現場に求められる学際的で体系化された知識教育プログラムの確立を進めている。

防災科学技術研究所研究報告 第84号 2020年4月
ドローンを用いた災害初動体制の確立 -神石高原町における地産地防プロジェクトの取り組み-
https://dil-opac.bosai.go.jp/publication/nied_report/PDF/84/84-2uchiyama.pdf