日本財団は1月24日から25日にかけて、営業コンテナ船による無人運航の実証実験を福井県敦賀港から鳥取県境港まで行い、航行に成功した。

 同実証実験は、日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環として実施。実際に営業しているコンテナ船による無人運航船の実証およびドローンによる係船補助(船を岸壁にロープで係留する)作業などは、世界初だという。

 同プロジェクトで開発された自律航行システム、ドローンによる係船補助作業、陸上モニタリング用のAR(拡張現実)ナビゲーションシステムなどは、船舶の安全航行や船員の労働負荷低減に寄与することが期待される。

無人運航実証を行った営業コンテナ船「みかげ」

 同実証では、敦賀港から境港間の約270kmで無人運航を実施。コンテナ船「みかげ」では、他船検出センサーとして用いるAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加えて、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラを搭載し、AI学習による他船検出システムを開発した。また、検出した他船の動きに基づいて衝突を避ける自律操船システムも開発し、実験に成功した。
 さらに、船員総動員で行う着岸の船員負担軽減のため、船を岸壁に係留するロープをたぐりよせるヒービングラインをドローンで運ぶシステムを開発。無人運航船では、陸上での監視も必要となるが、AR(拡張現実)技術を活用し、船上からの映像に各種情報を画面上に重畳して表示するシステムも使用した。

ドローンによる係船補助作業
操舵室と陸上のモニターに表示される「ARナビゲーションシステム」

 今回無人運航を行った内航コンテナ船「みかげ」と同等の大きさ(総トン数749トン)の船舶は、現在、内航船舶の約1割を占めている。一方、内航船では1回の運航で船員の拘束時間が長くなることや船員不足などを理由に、労働基準法に照らし合わせた場合、3~4割の船員が労働時間に関する基準を超えている(国土交通省「内航船員の労働実態調査結果」)。

 同実証により実際に営業に使用しているコンテナ船での無人運航実証実験が成功したことで、将来的に技術転用が進めば、内航海運における課題である船員不足や作業負担の低減、オペレーションコスト低減などへの貢献が期待される。

 無人運航船は、海の事故の減少、海運の人手不足の解消など、さまざまな課題の解決につながるものとして研究・開発が進められている。日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」では、2020年2月より5つのコンソーシアムと共同でさまざまな船種の無人運航船の開発に取り組んでおり、2022年1月から3月にかけてすべてのコンソーシアムで実証実験を行っている。